カテゴリ:仕事
彼女の直訴状が舞い込んだのは先週の木曜。
次に彼女と対峙しなければいけないかったのは今週の月曜。 それまでに、何をどういうふうに運んでいくかの筋立てを考えておかなければいけない。 細かい部分の流れがどうなろうと、私のほうの大前提は譲れないものにしておく必要がある。 その大前提。 「イヤなら辞めてもらっていいんですよ」 これに尽きる。 これはもう私自身の率直な気持ちである。 仕事に就くということは、企業側と個人側の綱引きだ。 企業はできるだけ優秀な人材をできるだけ安く仕入れたいし、個人側は自分の経験や知識をできるだけ高く買ってくれる企業を探したい。 前々からの持論だが、就職と結婚は似ている。 お互いが引き合っている時には結ばれる過程にも加速がつく。 反対に、退職するとか離婚するとかの負の方向に向かう状態の場合は、たいてい両者のうちの片方だけか両方ともか、相手方に対する消化不良型不満が必ず既に発生している分、進み方はこれ以上ないほどキレが悪い。 今の職場にどうして、そのゆきちゃんが来たか、というのは前の日記に書いた。 本当はウチに来てほしかったさつきさんが都合で辞退し、突然手を上げたマリが合格通知をもらっておきながら直前に辞退し、もう一人どうしても必要だったところに、成り行きでゆきちゃんが来ることになった。 当時、私なりに今の3人の待遇には便宜を図り、以前の職場とほぼ同じ待遇になるところまで交渉した。 社長の山村さんにも「前の会社が潰れたから引き取る人材だと足元を見るのはやめてもらいたい」と、言いたくないことも言ったが山村さんは理解してくれた。 私の見立てが甘かったと言われれば返す言葉もないが、本当にこのゆきちゃんみたいに、何かあれば全部ゼニで換算しないとやってられんという人に、私はこれまで会ったことがなかった。 仕事の中での考え方の違いは、ある程度までは許容範囲だと割り切るしかないだろうが、お金への執着をここまで躊躇なく浅ましく見せて平気な人に、こんなに自分が嫌悪感を抱くことになるとは自分でも想像していなかった。 さて、彼女の直訴状をもとに作戦を立てた。 こうなったら私の言いたいことを言ってやろう。 但し、私の発言を「彼女の直訴状に対する会社の本部からのすげない回答」に変換しておかなければいけない。 以下、彼女の主張のポイントと会社の(というより私の)回答。 1)「仕事が給料に見合いません」「今年の昇給分よりも仕事量の増え方のほうが大きいです」というポイント それではまず、あなたのほうから、どれくらいの仕事はどれくらいの給料で行うものなのかという根拠、それと「昇給分<仕事量の増加」と判断する根拠も提示して下さい。 見合う・見合わないといったような、一見、個人的主観と取られやすい説明について、それが主観でないという根拠を提示してもらえれば、本部で内容を再検討します。 ちなみに、会社側としては、同業他社の平均的な給与体系は把握していますし(これはウソ。だけどこれくらいの情報は1日で集められる)イギリスの物価上昇指数も考慮して今年、昇給しましたが、それが何か・・・? 2)「給料が増えないなら仕事量を減らせ」との主張 現状、海外の各支部での取扱実績と売上高のスタッフ1人あたりの成績を見る限り、イギリス支部のそれは、支部全体の平均を下回っています。 但し、これはあくまでもかかってくる電話の数の比率が仕事を左右しているので、イギリス支部の人たちの怠慢だという意味ではありませんが、一つの事実です。 スタッフ1人あたりの実績と売上高をトップの○○支部と比べるとイギリス支部のそれは、2.7分の1です。 この状況で仕事量を減らせと言われるほどイギリス支部の仕事量が多いとは、会社は今のところ考えていません。 3)「イギリス支部発足当時とは話が違ってきて、余分な仕事が増えた」とのポイント 仕事の内容というものは、どんな企業や団体でも、その時点でのクライアントの意向や業界・社会の動向によって変遷していきます。 例えばイギリスでテロが発生すれば、警察官や警備員という人たちは、自分の責任でもないのに警備や警戒の質量を強化しなければいけなくなりますが、そのこと自体によって給与がアップするなどということはありえません。もちろん残業が増えれば残業手当はつきますが、基本的な給与がアップする理由がないことは理解できますか? 業界を取り巻く外的な変化がそれぞれの仕事の内容に反映されるのは当然です。 また、仕事というものは「10やりなさい」と言われて10できたとしたら「ご苦労さまでした。これからも10だけやっていればいいですからね」ということはまずありません。 会社が大きくなって、増えたProfitを従業員に還元するためには10から12、12から15と要求は増えます。 4)「新たにスタッフを採用するのって大変ですよねぇ。今いるスタッフだってこういう状況じゃ、いつ辞めるかわからないし」という彼女なりの静かな脅迫。 **彼女は自分のジャンルを準専門職であると見て、その自分がやめると、後釜を雇うのも育てるのも大変よねぇと、脅しているのである。しかしここで負けられないのだ。** はい、スタッフの採用は大変です。一人前になるまでに会社は物心両面の負担があります。 但し、企業にとって人材の出入りは避け切れない必要悪でもあります。 企業側は同じ従業員にできるだけ長く勤めて貢献してもらいたい、従業員は企業側にその成果を還元してもらいたい、とお互い思い合うのが理想ですが、時に思惑のバランスは崩れます。 特に従業員側に「こんなはずではなかった」という不満が出やすいです。 会社としては、そういう不満に耳を傾けて解決に努力します、というお約束はできても、結果として必ず個々の不満をすべて解消できるというお約束はできない場合もあります。 それに会社としては、1人の従業員の不満を100%解消することより、従業員200人の不満を85%解消することが優先される場合が往々にしてあります。 それに、ゆきさんの主張では、イギリス支部はたまたま経験者且つ現役の人たちが定員数でうまく異動してきたのだから、会社はそのことに感謝すべきと言っているように聞こえますが、これはお互い様ではないでしょうか。 あの当時、ゆきさんを始め、みつこさん・ゆみさんは前の職場と同じ給料且つほぼ同じ勤務時間で、しかも、より少ない交通費自己負担と通勤時間減少という条件に魅力を感じて今の会社に来られたのではなかったのでしょうか。 つまり、4人がウチに来てくれたことが会社にとってラッキーだったのは事実ですが、逆にその4人も、転職先をハカリにかけて検討しませんでしたか?前の会社はなくなることになっていたわけだから、もっといい転職先があれば、そちらに行く自由もあったのにウチに来たのは、皆さんのそれぞれになんらかのメリットがあったからではないのですか? もちろん、あれから2年近く経ちますから、皆さんに「仕事に飽きてきた」「今一つ給料が安い気がする」「もう続けられない、限界だ」というような気持ちの変化もあるかもしれません。 しかし、そういう気持ちの変化に会社として形で対応できない場合、皆さんの人生ですから、会社は皆さんを引き止めるわけにはいきません。 会社としては残念ではありますが「次のところでもがんばって下さいね」と言うしかありませんね。 以上のシナリオ完成。 月曜は職場復帰当日なので、他に仕事もあるから個別面談の時間が取れない。 Xデーを翌日の火曜に決めた。 ゆきちゃんは早出だし、勤務時間の最後の30分で面談して、そのまま帰らせよう。 私はその次の日は休みだし、ゆきちゃんが面談後に泣こうがわめこうが(面談中に泣いたり怒ったりするようなタマじゃない)とにかく自分で、何が得策なのかゆっくり自分で考えればいい。 本当に退職するつもりなら、次に私が出勤した日に退職願でも持ってくるだろう。 でも、持ってこないと思う。 彼女、辞めないって。(爆) どう?ゆきちゃん、わかる? アンタ一人がダダこねたって、会社は別にびくともしないんよ。 2年前に今のオフィスが開く時は全員が経験者でなければ、当日に開けられなかったのは事実やけど、私は別にその時だけゆきちゃんを利用して、今になってポイ捨てしようとしてるんじゃないよ。 この2年間、同じ条件だったらできるだけ働きやすいように私は私で工夫もしたし、本部とケンカも攻防もして、守るべきところは支部を守ってきたつもり。 でも、ゆきちゃんにとってそんなことはおゼゼそのものじゃないからどうでもよかったんよね。 辞めたければ辞めて下さい。はい、どーぞ。 脅してもアンタの給料は上がりません、いえ、上げません。 アンタの仕事は、アンタでないとできない仕事じゃないよ。 もちろん、いきなり辞められたら、その穴埋めは私がするしかないから、それを考えたら頭がパンクしそうやけどね、ほんとは。 でもね、これから先も定期的に「金銭で割に合わない」「給料が安いからお客にも荒っぽくなる」なんて言いながら居座られるんなら、辞めてくれたほうが空気がキレイになる。 結局アンタが辞めたって、新人雇って全部教えるまでの間、私が数週間~数ヶ月、辛抱したら済む話なんよ。 アンタはその少ない人生経験と、今の仕事しかない職業経験と浅はかさを武器に、どうぞがんばって転職活動して下さい。 自分の家からロンドンまで、とてつもなく長い通勤時間と膨大な交通費を計算しながら新しい仕事、探しなはれ。 で、仕事見つかったら教えてな。 ちょっと豪華な「転職おめでとうカード」送ったげるからな。 大丈夫。カード代は私のオゴリやからね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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