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カテゴリ:お食事
読書の秋に・・・北大路魯山人『料理王国』(文化出版局)を読む 僕は本読みの方だと思う。正統な学問の経験がないので(最終学歴高校中退ー中卒)なので系統立てた読書ができず、ただ目に付いたものを手当たり次第に読んできたので、とても学問とは言えない散漫なものでしかない。 主に十代後半で知り合った友人の影響で文学を自分の宿題と思って読んできたので、短詩型文芸や小説、文芸評論を読むことは、自分に課したお勉強だと思っています。 宿題としての読書とお楽しみの読書と分けないと、めざす量書制覇がはかどらないので宿題以外にお楽しみの読書プランというのも設定しています。 僕の最大のお楽しみ読書は1/スポーツノンフィクション 2/食べ物=料理随筆 3/科学・物理学の啓蒙書ということになります。 普通、お楽しみ読書に多くの人が取り上げる1/ミステリー 2/時代・歴史小説などは、老後の楽しみのため手を付けていません。 少年時代に貧しかったから(いまも貧しいけど)食べ物への執着が激しく、成長期に普通に豊かな食生活を送った方に比べると『ごはんへの視線に歪みがある』と思っています。 だから食べ物の随筆を読むと、自分では手の届かない、たとえば『吉兆』とか『辻留』などという超高級料理屋の文章などを読み、いつか一度は経験したい!と身悶えしつつ、がんばれば手の届く有名食堂には、果敢(こういうのを果敢なんていうのかな?)に挑戦してきたのです。 永井荷風愛したという、浅草の洋食『アリゾナ』や喫茶『アンジェラス』などにわざわざ出かけて、海老フライやコーヒー&ケーキなどを食べてみたのです。 どちらも想像してたときの方がおいしかった。 漫画家と言うより、いまや当代きっての名文家・名随筆家である東海林さだおさんの食べものエッセー(注1)で知った新宿の『綱八』にてんぷら定食1350円を、わざわざ食べに行ったのです。僕の予算で行ける範囲では、最高でした。何回かに分けて揚げて、配られる天ぷら、(いつも揚げたてを食べられる配慮)つやつやの粒だったごはん。シジミ汁が素晴らしかった。 池波正太郎ごっこと言うのもやります。蕎麦やでお酒一本頼み、天ぷら蕎麦蕎麦抜きを頼むのが池波正太郎スタイルです。 できれば粋な着物など着用してそういうことをしたいのですが・・・(オツな雪肌のうなじが美しい年増の女性など同伴できると更に良い)僕はエンゲル係数が高く、とても被服方面に予算を費やせないので、破れTシャツにジーンズが盛装なのです。僕にとって粋な着物をお召すことなどダルニー(注2)なのであります。 夏はまだいい!被服に貧富の差が出にくい。稼ぎの少ない私も、ちょっとしたブランドのTシャツくらいは無理すれば買える。でも冬は被服で財布の中身があからさまになってしまうのです。私の冬の被服対策は、昨年冬に友人かみ様と、肉体労働者方面御用達の新井薬師作業着店お揃いで購入した2500円!のドカジャン(注3)ストーンズとブルースブラザーズのワッペン付きなのですね。かみ様はさらにガンジャ(注4)のワッペンも付けていました。 ------------------------------------------------------------------------------------- 本論に入ります。魯山人は知っている人は知っているが、知らない人は知らないだろうな・・・(当たり前ですね)あの漫画『美味しんぼ』の海原雄山は魯山人がモデルだと聞いたことがあります。 書家(篆刻家)にして骨董のめきき、星岡茶寮開業後は、自らの料理を飾るために作陶家としても超一流の腕前を見せた(注5)。そして何よりも、最高の料理人。 以前、白崎秀雄の評伝『北大路魯山人』を読んで、才能にあふれた人だとは、思たけど、あまりにも周囲の人間を慮らない、自分の才に溺れた嫌な奴だと思ったけど、本書を読んで、ちょっと印象が変わった。 なによりも魯山人の強烈な日本料理=日本文化に対する恃む心が、気持ち良いのです。 本書に集められた魯山人の食随筆は、星岡茶寮機関誌(注6)、朝日新聞、芸術新潮などに発表されたものを集めたものです。本書は1980年初版以来、(僕の古書店で購入した版は1996年の第20刷)ずっと売れ続けたロングセラーなのだ。 「味を分かるには身銭を切ってみること」「味を養うのは美術の鑑賞力を養うのと同じだ」「料理の真髄は材料の吟味に尽きる」「器は料理の着物。器と料理の調和が考えられているのは・・・世界中にあるあらゆる民族の料理があるが、日本料理が極北である」などの魯山人の発言はヨサク愛国主義者の僕は嬉しくなる。 本書で魯山人は世界旅行で立ち寄った各国名店レストランを寸評している。フランス料理は」器への配慮が全くないから全く評価できない。 中華料理は材料の吟味という点で日本料理の域には到底及ばない等。 下記の引用したような言葉嬉しくなってくるではないか! >『日本料理は眼に訴えてくる美しさは絶対なのである。 食器の美。盛りつけ。居室の美しさは世界無比である。』 魯山人は最高の寿司は『銀座獅寿司屋九兵衛』と書いています。 行ったことがない! 魯山人は最高の豆腐は『京都の豆腐』と書いています。 食ったことない! 魯山人は最高の鮎は『京都丹波の和知川の鮎』と書いています。 食ったことない! 魯山人は東京のうなぎにかかっては関西のうなぎの原始焼は無条件降伏をせねばならない!と書いています。 ミャーボー同意。焼きたてはどちらも美味いけど,さめたら関西スタイルより江戸の蒲焼きのほうが断然美味い! 本書で一番多く魯山人が多く語っている食材は何か? 嬉しいことに僕が一番好きな食べ物だった。答を知りたい方には教えますが・・・ できたら本を読んでください。 それにしても僕たちは、いつになったら自分の識見で物を見て、自分の舌で味を知ることができるのか? ☆東海林さだおさんの食べものエッセー(注1) 僕にとって読書の最高の楽しみ!でも何を読んだか?何を読んでいないか?が分からなくなる金太郎飴的なんです。一度購入した東海林先生の本を間違えて二回買ったことが何回もあります。 ☆ダルニー(注2) ロシア語で『遥かなる地』という意味だそうです。不凍港を求めていたロシアが中国を侵略して得た不凍港をダルニーと名付けた。日本が日露戦争のあと統治してダルニーを『大連』と名付けたそうです。 このことを清岡卓行の芥川賞受賞小説『アカシヤの大連』を読んで知りました。 僕がもっとも好きなの芥川賞受賞小説です。 ☆ドカジャン(注3)土方ジャンバーの略。根が労務者体質の僕はとても似合うと思う。 ☆ガンジャ(注4)大好きなおかず。 ☆作陶家としても超一流の腕前を見せた(注5) 僕は人間国宝『荒川豊蔵』の器を見た時しびれました。『荒川豊蔵』が魯山人の弟子だと知ったとき、魯山人がさらに巨人に思えたものです。 ☆星岡茶寮機関誌(注6) 星岡茶寮は究極の料理屋なんだろうね? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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