リンカーン
2012年【米】スティーヴン・スピルバーグ監督、ダニエル・デイ=ルイス主演。エイブラハム・リンカーン大統領を描いた作品だが、有名な南北戦争開戦や、ゲティスバーグでの演説や劇場での暗殺などの有名なシーンを描くのではなく奴隷制度の廃止を盛り込んだ憲法13条改正の政治闘争をスコープにしています。史実として、リンカーンは決して目的として奴隷制度廃止に、動いたのではなく連邦制を維持するための政治的手段としていたあたり、もう一歩踏み込んで欲しかった気もします。ちなみに「奴隷解放の父」のイメージがありますが、インディアン民族に対して彼は、終始排除を続けていたことは知られていないようです。また、国民国家(Nation-state)という国家概念が定着し、意識すらされなくなって久しいが、近年の急速なグローバル化のなかで、それが幻想の共同体であるとの批判も高まっている。一方で、我々が抱く「国民・国家・民族に由来するイメージ」は、近代国家形成期に階級社会を包括するかたちで創出された(歴史の浅い)ものであることを、この作品を見ながら再認識した。