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パソコンの右隅に表示されているのは19:45。
電気を落とした会議室には課長に主任にセンター長など、 肩の凝りそうな面子が仏頂面。 見つめる先にはプロジェクターから投射されたエクセル画面、 from環ちゃんのノートパソコン。 ブラインドの降りた窓の外は、すっかり日の落ちた夜の景色。 「…っ…疲れたぁ」 そっと心の中で呟く。 会議の始まりはまだ日の光の突き刺さる13:30。 あれから6時間と15分。 ラーメンなら125杯分。 流石に会議中にラーメンを食べるわけにはいかないので、 机の上には自腹を切ったお茶のペットボトル。 それも、そろそろ底が見えてきそうな残量。 なんとも重苦しい会議は、まだ終わる気配無し。 内容がだんだん複雑になり、煮詰まる先は見識の先。 うーん、正直わからない。 メモ帳でも持ってくればよかったかなぁ。 パソコン画面がプロジェクターで投影されているから、 パソコンで時間を潰す事もできないし。 いかん、睡魔まで襲ってきた。 はっ! いかんいかん。 再びプロジェクターに投影されている自分のパソコン画面を見る。 小数点以下の数字が所狭しと並び、カラフルなパラメーターが乱舞。 はっ!! だから駄目だってばさ。 首を左右に振って、大きく背伸び。 真っ暗闇の狭い会議室。 見渡すと、自分を除いた5人は画面を凝視して長考。 そして僕は一番後ろ。 … という事は、誰も僕を見てないんだなぁ。 そうか。見てないか。 「ここで、大魔神のマネとかしたら、俺凄いんじゃね?」 なんだ、今の声は。 誰の声だ? 大魔神? そっと腕を顔の前でクロスする。 高鳴る心臓。 こんなドキドキは、アバンチュールな夜にホックを外した時以来だ。 怒りを表現する般若のような表情。 音で表現するとしたら「くわっ!」 まだ両腕に隠されて、その表情は誰からも見えない。 職場の諸先輩方が真剣に論議を交わす場で、大魔神顔をする平社員。 一体なんのメリットがあるというのか。 張りつめた空気。 「うーん」 うなるセンター長。 慌て素に戻る大魔神。 エクセルの表を指さし、そして再び腕を組む。 危なかった。 こんな姿を見られたら、ごまかしようが無いではないか。 大きく一つ息を吐き、再び両腕を顔の前でクロス。 …まだやるか!? 般若モード。 腕の隙間から周囲を伺う。 全員が真剣にプロジェクターに集中。 今がチャンス! 「だぁーいまぁっじぃーん」 ゆっくりと腕を開く。 決して急がない。 愚かな人間に対する怒りが溢れ出すこの瞬間。 達成。 アブラハムには7人の子、1人はノッポであとはチビ。 会議室には6人のサラリーマン、1人は大魔神であとは上司。 その後、何事も無かったかのように、会議は21:30まで継続。 日本の経済を支えるサラリーマンは、今夜も戦っているのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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