ジョン.フォード監督作品は西部劇だけではなく、
アイルランドを舞台にした名作、”静かなる男”など
大好きな現代劇作品があります。
どの監督でもそうでしょうが、いつも決まって出演する
俳優…フォード組とでも言いましょうか、例えば
ワード・ポンドなど殆どのフォード作品に出演していますね。
アイリッシュ気質を描いた3部作、
”我が谷は緑なりき”は、すでに紹介済みですが、
”静かなる男”も書きたいなと思っています。
そして今夜紹介する作品は
アメリカはウエストポイントを
舞台にしたものですが、アイリッシュ気質を丁寧に描いた
”長い灰色の線”です。
タイロン・パワー主演、お相手はフォード組常連の
モーリン.オハラ。
どうしても静かなる男のイメージからして、
ジョン.ウエインのほうが
良かった?かなと思ったのですが、いやいや
この主人公はタイロンで正解でした。
タイロン.パワーという男優は
ギリシャ彫刻のような美男子ですが、容姿はというと
意外にずんぐりむっくりなんですよね。
一本気で失敗ばかりする三枚目は
タイロンにぴったりの役どころだったんです。
ウエストポイントの陸軍士官学校で陸軍士官を養成する
仕事に一生を捧げたマーティー・マーの実話を元に描いた作品。
マッカーサー元帥やアイゼンハワー元大統領を送り出したウエストポイント。
タイロン扮するマーティーは一本気で屁理屈も時々こねるが、
生徒と同じ目線、姿勢で彼等に接するので
生徒からとても愛される。
この学校に50年勤務する中でのエピソードを
温かく、ユーモラスに描いています。
二枚目俳優が三枚目を演っているので非常に新鮮なのです。
若いうちは失敗ばかりを繰り返し、生徒たちに助けられる事も多いが
中年期にさしかかって、教え子が戦場で死に直面して
ぐらつきそうになる、そして老人となってリタイヤする充足感までを
骨太に演じきっている。
生徒たちと一緒にマーティも成長してゆく過程が
見ていて心地よい。
アイルランド移民の両親を持つフォード監督は
マーティの父親に
しっかりとしたアイルランド気質を
演じさせている。
決してスマートではないタイロンの魅力。
端正な顔形よりも誠実な部分を膨らませることは、
単にアメリカの正義を訴えているものではなく、
明るさと、ユーモアとどこか人を包み込む人柄の素直さを
のびのびと描き、
従来のタイロンにない魅力を醸し出しているのである。
モーリン.オハラはいつものように
はにかみ屋で頑固、一途、そしてかしこい女性を
明るく頼もしく演じている。
なでしこ流に申しますと
モーリン・オハラって
日本では巴御前のタイプ・・・とっても好きですね。
生まれて来たタイロンとモーリンの息子は
誕生してすぐに死んでしまうが、
その地に留まる辛さで去ることよりも
彼等の教え子を我が子たちとして
そこで育てる事を選ぶ。
そしてそれぞれが旅立ち、戦場に赴き、生き残って二世を
誕生させたものはみんな息子を送り込んできた。
その子達の癖や言動が一世にそっくりなことも
タイロン・マーティ夫妻にとっては嬉しい。
タイロンは1914年に誕生して1932年のデビュー・
1958年、44歳で亡くなっている。
戦前の作品では、”シカゴ”と”血と砂”くらいしか知りませんが
アクションで活躍したよう。
戦後、40歳という中年になってからは、
彼の甘いだけではないきびきびとした魅力が花咲く。
もちろん戦前も人気は圧倒的だったのでしょうが。
1954年、”長い灰色の線”の後、
1955年に”愛情物語”
1957年に”日はまた昇る”
1958年に”情婦”と駆け抜け
1958年に心臓発作で亡くなったのである。
わたくしはどちらかといえばあまり好きとはいえないタイプの
俳優さんですが、この”長い灰色の線”という作品の彼は好きですね。
ジョン・フォードの作品で珍しく宗教色の濃い、”逃亡者”という
ヘンリー・フォンダ主演の作品があります。
西部劇のフォードも大好きですが、アイルランド気質を描いた
”静かなる男”は又大好きな作品です。
故郷はだれにとってもすばらしいもの。
フォードにとっても両親の故郷は格別のものなのでしょうね。
イギリスに占領されてからのアイルランドは
カトリック教とプロテスタント教の戦いの歴史ですが、
国旗の色は緑と白とオレンジの三色。
緑はカトリック、オレンジはプロテスタントを表し、
白はその中立、両方を表すものなのだそうです。
アイルランドの肥沃な土地は頑固でも、
その人柄も肥沃なのでしょう。
あのキレイなキレイな緑に包まれた景色の”静かなる男”は
愛すべき頑固者たちの物語を温かく包み込んでいましたね。
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最終更新日
2005年02月27日 22時27分28秒
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