カーテンレールの実験 かけ算わり算から微分積分へ(その10)
カーテンレールの実験ガリレオ・ガリレイ(1564~1642)は、落体の法則を発見したことで有名です。この法則は次の2つからなっています。落体の法則>1. 物体が自由落下するときの時間は、落下する物体の質量に依存しない。2. 物体が落下するときに落ちる距離は、落下時間の2乗に比例する。ガリレオが、ピサの斜塔の上から、大小2種類の球を同時に落とし、両方が同時に着地するのを見せたというのは弟子の創作らしいのですが、実際に行なった実験は、斜めに置いたレールの上を、重さが異なり、大きさが同じ球を転がす実験です。斜めに転がる物体ならばゆっくりと落ちるので、これで、重さによって落下速度がかわらないことを実証したのですね。この実験は、その様子を描いた絵画も残っています。当時、中世を支配していたアリストテレスの世界観では、重いものほど早く落下することになっていたので、それがゆらぐということは、天動説そのものがゆらぐ問題になり、アリストテレス派の研究者と論争になったと言われています。ガリレオの斜面は、木製で長さが7mほどあったと言われていますが、私は、高校1年生が二次関数を学び始めるときには、1.8mのカーテンレールに10cmごとに目盛りをつけて、パチンコ玉を転がして、この実験を再現しています。先輩たちのすぐれた実践があり、カーテンレールを4秒で転がる斜面を作ることができるのですね。カーテンレールの上の方から45cmあたりにカセットテープのケースを横に立てるとだいたい4秒で転がる斜面になるのです。1.8mを4秒で転がったとしたら、2秒で転がる距離はどれぐらいかという問題を考え、みんなで予想し、実験で確かめるというものです。生徒たちに質問すると、「2秒で転がる距離は90cm」と答えるのですね。比例感覚に毒されている生徒たちは、時間が半分なら転がる距離も半分であると思い込んでいるのです。だから予想は見事にはずれていくのですね。そこが面白いのです。2次関数を学ぶときに大切なことは、この生徒たちの「常識」をひっくり返すことなのです。そのことは、大学受験のために学ぶなどとは違う、学ぶということの本当の意味や大切さや面白さを学ぶ重要な機会になるからです。生徒たちの既成の考え方を壊したり,ゆさぶったりすることは、授業の原点と考えられます。いきなり公式が出てきて、それに数字をあてはめるだけの数学の授業とは全然ちがうものになりますよね。予想がはずれた生徒たちには、なぜかという疑問が湧いて、二次関数を学ぶ動機と意欲が生まれてくるのですね。ちなみに、2秒で転がる距離はたった45cmにすぎないのです。それが二次関数の特徴なのです。それは、ガリレオが発見したように、落下する距離は、時間に比例するのではなくて、時間の2乗に比例するからです。高校1年でほとんどの生徒が学ぶ「数学1」に出てくる二次関数は、大人になって思い出してみると、ただ「グラフかき」で終わっていて、現在でも、漢字の機械的な反復練習と同様に、いろいろな練習問題で繰り返しグラフをかかせるだけで、なぜ二次関数を学んだのかということは、教師にも生徒にもわかっていないのではないでしょうか。では、この二次関数をどう教えれば面白いのかということを考えたとき、中世の世界観である天動説から、近代の世界観となる地動説へと激動していく時代と結びつけて、ガリレオの実験のもつ意味をとりあげることは大事な出発点になるのではないかと私は考えるのですが、みなさんはどうお考えでしょうか?<続く>ご訪問有難う御座います。下の2つの教育ブログ・ランキングに参加しています。よろしかったら下のそれぞれのマークをクリックした下さい。ランクの点数が加算されます。人気blogランキングへ