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社会保障番号、住民票コードが有力候補 利用拡大に不安
記事:毎日新聞社 提供:毎日新聞社 【2007年8月6日】 社会保障番号:住民票コードが有力候補 利用拡大に不安 国民全員に11けたの住民票コードを割り当て、個人情報を一元管理する、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)は5日、第1次稼働から6年目を迎えた。今年に入り、住民票コードのインターネット上への流出が相次ぐ中で、東京都国立市など3市区町の不接続が続き、大阪府箕面市は5月に個人選択制導入を表明した。一方、住民票コードは、社会保険庁改革関連法の成立で利用範囲が拡大されたほか、安倍晋三首相が導入を目指す社会保障番号の有力候補だ。「国民総背番号」を巡る最近の動きをまとめた。 「国民一人一人の年金記録をきちんと管理できなかった社会保険庁に、さらに大量の個人情報を提供する法改正は理解に苦しむ。本来なら利用を停止させ、一から出直させるのが筋ではないか」。日本消費者連盟の吉村英二さんは憤る。 今年6月に与党の強行採決で成立した社会保険庁改革関連法。住民票コードを国などの事務に利用するには住民基本台帳法の改正が必要だ。その改正案は改革関連法案の一部として目立たずに提案されたため、国会審議で大きな争点とならなかった。改正住基法が成立した99年当時の93件と比べ、住基ネットを利用できる事務は3倍に膨らんでいる。 社保庁関連の新たな事務は(1)年金を受給するには、60歳までに最低25年間は保険料を払う必要があるため、34歳になる国民全員の個人情報と国民年金加入者リストを照合し、未加入者には加入を勧める(2)氏名や住所の変更と死亡の届け出を原則として廃止し、住基ネットの情報を基に更新する--の2件。社保庁は(1)は07年度中、(2)は新たな年金記録管理システムを開発して、11年度中にスタートさせたい考えだ。 吉村さんは「国民の申請に基づいて行政機関が住基ネットにアクセスして本人確認するという情報の流れが、本人の意思にかかわらず住基ネットから国側に自動的に提供される仕組みは、自己情報コントロール権の確立を求める立場からは問題が大きい」と指摘する。 一方、参院での与野党逆転を受けて国会でも異議を唱える声が出ている。民主党の河村たかし衆院議員は「住基ネット廃止法案を議員提出し、参院で可決させたい」と意欲を示した。 ◇導入に1000億円超も 「社会保障番号のようなものを作れば処理も容易になる。早急に検討すべき課題だ」。安倍首相は6月14日の参院厚生労働委員会で持論を展開し、社会保障番号の導入を表明した。06年9月の自民党総裁選出馬に当たって公表した政権構想「美しい国、日本。」に、「社会保障番号の導入や徴収一元化について検討」と明記していた。 大量の情報が宙に浮いた年金記録問題の再発防止を名目に、政府は年金をはじめ医療、介護、雇用など官民の社会保障に関する個人情報を一元管理するシステムの構築を決めた。11年度中に交付するICカードの社会保障カードに社会保障番号を格納する考えだ。 どの番号を使うかは(1)住民票コード(2)97年に被保険者に割り当てた基礎年金番号(3)独自の番号--の3案を軸に検討していくとみられる。ただし社会保障番号は外国人も対象とし、生涯不変とする方針とみられ、いずれも一長一短がある。日本国民が対象の住民票コードは変更可能で、民間利用はできない。外国人にも付与される基礎年金番号は不変だが、加入義務のない未成年や未加入者の扱いが問題になる。独自番号にしても、新たな費用がかかるうえ、具体的なアイデアはない。 社会保障番号の導入に向けた議論が政府部内で本格的に始まったのは、06年5月の経済財政諮問会議。牛尾治朗・ウシオ電機会長ら民間議員4人が「社会保障番号と社会保障個人会計の導入に向けて」と題した参考資料を提出。7月に閣議決定された「骨太の方針」に、社会保障給付の改革の一環として検討する方針が盛り込まれ、関係省庁連絡会議も設けられた。 導入費用はかさむ見通しだ。9月の連絡会議で示された試算によると、セキュリティー対策費を含む初期費用は1240億円に上るうえ、毎年775億円の運用経費がかかる。開発に約400億円、運用に約200億円だった住基ネットをはるかにしのぐ規模になる。 ◇住基カード、見込みの半分満たず 電子政府・自治体の基盤とうたわれた住基ネットの利点とされたのがICカードの住民基本台帳カード(住基カード)だ。転出入手続きの一部を省略できたり、公的な身分証明として使えたりすることが売り文句だが、普及状況は芳しくない。 総務省は初年度(03年度)の住基カード交付枚数を300万枚と見積もったものの、実際は25万枚。07年3月末の累積枚数も141万枚にとどまり、4年後も当初見込みの半分に満たない。 06年度に国の行政機関などが住基ネットから提供を受けた個人情報は7147万件で、このうち年金関係は7117万件で9割以上を占める。住基ネットを通じて受給者の生存を確認できるため、06年10月から現況届を原則廃止したこともメリットの一つとされる。 ところが、社保庁が保有する3167万人の厚生年金・国民年金の受給権者情報について、住基ネット情報と照合したところ、592万人分が合致していなかった。不一致なのは海外居住者や住民基本台帳上の住所と別の場所で年金を受けている人たちで、厚生・国民年金受給者の約2割は今後も現況届を提出し続けなければならない。 住基ネットと連携して04年1月にスタートした「公的個人認証サービス」の利用はさらに進んでいない。住基カードに組み込まれた「電子証明書」をインターネットを通じて行政機関に提出し、電子申請・届け出などをする際に、他人によるなりすましを防ぐための仕組みで、発行手数料は500円(有効期限3年)。総務省の内部文書によると、04-06年度の電子証明書の発行枚数を計1000万枚と見込み、年間の必要経費15億-16億円を賄えるように手数料を設定したはずだった。ところが、07年6月現在の発行枚数は目標の20分の1にすぎない26万枚。「独立採算」は達成できていない。 オンライン旅券申請システムのように財務省から中止勧告を受けかねない総務省は06年11月、「公的個人認証サービスの利活用のあり方に関する検討会」(座長、大山永昭・東京工業大教授)を設け、普及に本腰を入れ始めた。 ◇総背番号に道開く恐れ--石村耕治・白鴎大法学部教授(情報法) 国民全員に番号を付けて身分証明カードを所持させる国民管理システムの導入は、1970年代から政府の悲願だった。プライバシー侵害が懸念された住基ネットでは、真の狙いを隠すために住民票コードの民間利用を禁止し、住基カードの所持を任意とするなどした結果、極めて使い勝手が悪くなった。住基ネットに参加しない自治体も現れ、市区町村をベースにした番号は、政府のコントロールが及ばなくなることに気づいた。今回は年金記録漏れに便乗できたが、政府にすれば、テロ対策など導入の口実は何でもよかった。 しかし、社会保障番号のように民間利用も想定した汎用番号による管理では、芋づる式に情報を取り出せるため、プライバシーを厳格に保護しようとすれば膨大な管理コストがかかる。 また、なりすましなど不正利用や犯罪の温床になりやすいことは、米国の社会保障番号(SSN)を見れば分かる。国民総背番号制に道を開く危険性があるばかりでなく、事務の効率化にも寄与しないのは明らかだ。 *個人が管理できるのであれば問題はないのですが、国で使い回しされるものであればいろんな問題を抱えてくると思うのですが・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.08.07 07:44:22
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