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2008.04.08
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カテゴリ:今日の出来事
異例のジャパン総力戦 新万能細胞iPSの真価

記事:毎日新聞社
提供:毎日新聞社


 ◇「ゲノムの失敗」教訓…スピード支援

 人工多能性幹細胞(iPS細胞)をヒトの皮膚から作ったという山中伸弥・京都大教授らの発表(昨年11月)から2週間後、文部科学省の徳永保・研究振興局長は財務省で担当主計官と向かい合っていた。「国民の期待が高まっている。何とか上積みしてほしい」

 iPS細胞は再生医療を大きく前進させる可能性を秘めている。08年度予算の財務省原案内示まであと10日あまりとなった大詰めの時期。徳永局長は再生医療研究支援の概算要求額(15億円)の増額を求め、大臣折衝を経て20億円が予算化された。「30年以上役人をやっているが、財務省査定で予算が増えたのは記憶にない」と振り返る。

   □   □

 日本の科学技術政策に携わる者にとって、苦い思い出がある。「ヒトゲノム(全遺伝情報)解読計画」だ。DNAに記録されたヒトの全遺伝情報を機械で読み取る構想は、日本の研究者が提案した。だが、国としての支援が遅れた結果、米国企業が読み取り装置を先行して開発、日本の貢献度は6%にとどまった。「独創のタネはあっても、育てるのが下手」。日本に押された烙印(らくいん)だ。

 それに引き換え、iPS細胞を巡る政府の対応は「異例の早さ」といえる。ヒトでの作成発表から、わずか1カ月で文科省は総合戦略をまとめ、今後5年間で100億円の支出を決めた。基礎研究と距離を置く厚生労働省、経済産業省も支援策を決定、「オールジャパン」態勢を整えた。さらに希望する研究者に実費でマウスiPS細胞を分配する事業もいち早く始めた。

 政府の支援策を検討した昨年12月の総合科学技術会議の前日、議長の福田康夫首相も「支援策の説明を非常に熱心に聞いていた」(内閣府幹部)という。誰も異論をはさめない「突出した成果」に加え、「世界と競争しているという構図が理解しやすかった」(再生医療に詳しい須田年生・慶応大医学部教授)。

   □   □

 「異例」は、これだけではない。日本では胚(はい)性幹細胞(ES細胞)研究指針で、ES細胞の利用に国と研究機関の二重審査など厳しい規制をかけている。「受精卵を壊す」という倫理問題に慎重に対応するためだ。だが、総合科学技術会議はiPS細胞研究を進めるためにES細胞研究は欠かせないとし、審査の簡略化を求めた。「長年の議論を簡単に覆してよいのか」。官僚の間には戸惑いもある。

 一方、拒絶反応が起きない再生医療の細胞作りに有望とされていたクローン技術などで、研究費打ち切りという事態も起きている。「全体のパイはあまり変わらない。iPSに流れただけだ」と嘆く研究者さえいる。

 世界との競争を背景に、iPS細胞研究は「錦の御旗(みはた)」になりつつある。山中教授は「科学的な研究で、日本の独り勝ちはあり得ない。必要なのは、すべての患者に役立つ治療につながる成果をいち早く出すこと」と語る。過去の失敗を教訓に、日本の生命科学研究は飛躍できるのか。その岐路に立っている。

*今まだどの分野でも遅れを取ってきた日本としては本当に異例の速さで・・・
でもクローン技術の研究費はなくなるとはさすがやる事がせこい!






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最終更新日  2008.04.09 07:44:30
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