タルトタタンの夢~近藤文恵著~
小さなフレンチレストランビストロパ・マル で繰広げられる
料理に関するプチミステリー集
「タルトタタンの夢」(全7話の短編集)より
「割り切れない チョコレート」を紹介します。
このお話「ノンブル・プルミエ」というチョコレート専門店が登場します
「ノンブル・プルミエ」というのは日本語で「素数」という意味です。
素数は2・3・5・7・11・13・17・19・23・29・・・・と、
1より大きい自然数で1とその数でしか割り切れない数のことです。
「ノンブル・プルミエ」は、8個とか10個入りはなく
全てこの素数(3個、5個、7個、11個、13個、
17個、19個、・・・)のセットになっている不思議なお店。
物語はこのお店のオーナーの鶴岡氏とその妹さんの
パ・マルでの会食シーンから始まります。
出されたボンボン・オ・ショコラにクレームをつける鶴岡氏。
たちの悪いクレーマーではなく的を得た内容に
チョコレートに対する熱い思いを感じる三舟シェフ。
後日またやってきた二人。今度は何か激しく言い合って怒って
一人で店を出て行く鶴岡氏。残されて呆然としている妹さんに、
話しかける三舟シェフ。2人は小さな頃から母子家庭だったそうで、
お母さんは苦しい生活でもいつも明るくて優しくて、
時々もらうお菓子も「私はいらないから2人で分けなさい」と、
自分はひとつも食べなかったらしい。
そんなお母さんに美味しいチョコレートを食べてほしいとフランスに修行に出た鶴岡氏。
日本に戻り自分の店をオープンし大成功。妹は忙しいのは分かるけど、
すっかり体調を崩して余命幾ばくもない母親に
会いに来てほしいと切願していたのだという。
それでも、今は会いにいけないという兄に妹は
「お兄ちゃんは人が変わってしまった」とため息を漏らす。
そんな妹に三舟シェフは、「お兄さんは何も変わっていないよ。
店の名前から分かるよ。お母さんは
昔2人で分けられなくて残ったときだけお菓子を食べてなかった?」と切り出します。
「はい、2人で喧嘩になってはいけないからとそんな時だけ食べてくれました」
「やっぱりね。きっとお兄さんは全国にいるそんなお母さんを応援したくて、
必ずひとつ残る数のセットにしているんじゃないかな。お兄さんはとても優しい人だね」
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↓興味を持たれた方は読んでみてくださいね