稽古76回目
■謡…「東北」6回目かるが故に天地を動かし鬼神を感ぜしむる言葉。神明仏陀の冥感に至る。殊に時ある花の都。雲居の春の空までものどけき心を種として。天道に叶ふ。詠吟たり。所は九重の。東北の霊地にて。王城の鬼門を守りつつ。悪魔を払う雲水の。水上は山陰の加茂川や。末白川の波風も。いさぎよき響きは常楽の縁をなすとかや。庭には池水を湛へつつ鳥は宿す地中の樹僧は敲く月下の門。出で入る人跡数々の。袖を連ね裳裾を染めて。色めく有様はげにげに花の都なり。見仏聞法の数々。順逆の縁は弥増に。日夜朝暮に懈らず九夏三伏の夏闌けて秋来にけりと驚かす。澗底の松の風一声の秋を催して。上求菩提の機を見せ池水に映る月影は。下化衆生の相を得たり。東北陰陽の時節もげにと知られたり。春の夜の。・今回の注意点1 8オ「のどけき心を」「の」の語尾が上がりきってないために、「ど」が最初から上音に上がりきってない。同様に「天道に」の「て」「ん」も。2 9オ「見仏聞法の数々」はクセの仕舞の真ん中。上げ扇をするところなので、上げ扇をしているところを想像して謡う。3 9オ「日夜朝暮に懈らず」・「九夏三伏の」の「クル」「入」は間延びせず謡う。1つずつ丁寧に謡いすぎるとリズムに合わない。・感想 前回のお稽古でレコーダーには最後までふき込んでいただき、最後まで自分で稽古をしていただきましたが、今回は時間がなく最後まで聞いていただけませんでした。しかし、納得いくまで自主稽古できていませんでしたので、私にとってはちょうど良くて、ちょっとラッキーでした。 「東北」はあらすじは非常に単純ですが、文章を読めば読むほど良さがわかってきました。こんなに単純な内容をここまで美しく書けるものなのだなと感心してしまいます。今日お稽古をした「所は九重の~げにげに花の都なり」は特に気に入った箇所で、皿洗いをしながらつい口ずさんでしまいます。■舞囃子…「吉野天人」中之舞10回目 今回でなんとか終了です。途中お稽古を休んだために前回教えていただいたことを忘れたりしたので、予想より時間がかかりました。なかなか進まず情けない思いをしましたが、多分先生も舌打ちしたい気持ちだったと思います。何度も何度も同じ事を我慢強くお教え下さった先生に感謝の念を覚えます。 初めての舞囃子が一通り終わり、謡だけではなくお囃子に合わせて舞うことを少し覚えたことで、経験が一ランク上がったような気がして嬉しいです。また、これまでは能を見ている時、謡がなく舞だけのところは退屈で「早く終わって欲しい」と思っていましたが、これからは中之舞だけは退屈せずに済みそうなのも嬉しいことです。