稽古86回目
■謡…「紅葉狩」4回目げにや数ならぬ身程の山の奧に来て、人は知らじとうち解けて、独り眺むるもみぢ葉の、色見えけるか如何にせん。 我は誰とも白真弓。ただやごとなき御事に、恐れて忍ぶばかりなり。忍捩摺誰ぞとも知らせ給はぬ道の辺の、便りに立ち寄り給へかし。思ひ寄らずの御事や。何しに我をば留め給ふべきと、さらぬやうにて過ぎ行けば。あら情なの御事や。一村雨の雨宿り。 一樹の蔭に。立ち寄りて。一河の流れを汲む酒を、いかでか見捨て給ふべきと、恥づかしながらも、袂に縋り留むれば、さすが岩木にあらざれば、心弱くも立ち帰る。所は山路の菊の酒。何かは苦しかるべき。げにや虎渓を出でし古も、志をば捨て難き。人の情の盃の、深き契りのためしとかや。林間に酒を煖めて紅葉を焼くとかや。 げに面白や所から、巌の上の苔筵。片敷く袖も紅葉衣の、紅深き顔ばせの。 この世の人とも思はれず。 胸うち騒ぐばかりなり。さなきだに人心、乱るる節は竹の葉の、露ばかりだに受けじとは、思ひしかども盃に、向かへば変る心かな。されば仏も戒めの、道は様々多けれど、殊に飲酒を破りなば、邪淫妄語も諸共に、乱れ心の花鬘、かかる姿はまた世にも。類ひ嵐の山桜。よその見る目もいかならん。よしや思へばこれとても。前世の契り浅からぬ。深き情の色見えて、かかる折しも道の辺の、草葉の露の託言をもかけてぞ頼む行く末を、契るもはかなうちつけに、人の心も白雲の、立ちわづらへる気色かな。今回の注意点1、6オ「紅深き顔ばせの」の「く」の謡い方は、1回浮いた後、2回目に浮く時は1回目に浮いた音階まで上げない。2、背筋を曲げない。両肩を少し引き気味にするとよい。・感想 先生が「すごく良い声が出るようになりましたね。なんかコツがわかったかしらね」「工夫の跡が非常に良く感じられました」「自分の方に息を引きつけて謡えていました」と仰いました。いつも、息の吸い方出し方や、情景を描くようにということを繰り返し言われていたので、このお言葉はとても嬉しいです。 注意されたところが少ないと、稽古記録に書くことも少ないので楽です。■仕舞「巴」2回目今回の注意点1、長刀を立てる時は垂直に立てず、わずかに前傾するように立てると格好がいい。2、「敵手繁く懸れば」で橋がかりを見る時は、長刀・右肩・左肩・右足が直線上にあるようにする。そのためには、足をかける時にかけすぎないことに注意する。3、「いで一戦嬉しやと」は「嬉しや」で前に出るのだが、「いで」から動く心づもりをしておかないと間に合わない。4、長刀を持つ左手は、長刀の端を持つ。5、長刀を振り上げるときは、右肘を曲げない。6、長刀を持ち替えるときは、左脇を締める。・感想 今日ははじめから「木の葉返し」の四拍子まで習いました。前回やった記憶を定着させ、訂正していただいたところまでで終わりました。長刀を扱うのは初めてなので、やすやすとは先に進めません。今日で足を出す順序や、体重移動のさせ方などを確かに覚えました。次回はぶんぶん振り回すところまで行けるでしょう。楽しみです。