『マタさんクラさん 世紀末でたとこ膝栗毛 』
「荒俣:それと、食べてるってことは、『食べちゃいたいくらい』という言葉があるとおり、自分の体に同化しちゃうことですよね。それを同化することは性愛とほとんど似たような行為で、それが最後に自分の体から分離していくっていうのは、生産=分娩行為でもあるわけですよね。ちょうどそれをうまくひっくるめた形で、こういうのがいわゆるガストロノミーの文学だとすると、スカトロジーっていいますかね、排泄のほうにも大きな目を向ける必要が本来あるにもかかわらず、美食文学とかグルメなんていうと、そっちのほうへはほとんどいかないですね。」(p.233)荒俣宏・倉本四郎『マタさんクラさん 世紀末でたとこ膝栗毛』講談社、1996年5月、2,500円