糸井重里『続々と経験を盗め』
糸井 中高年の人で「健康のため!」と、がむしゃらに歩いている人がいますよね。池内 います、います。「自分は80代だけれど、体力的には60歳の体なんだ。雨の日も風の日も歩いておりますからね」なんてね。僕に言わせると、雨の日も風の日も歩かないではいられないというのが老化のしるし。糸井 うまいこと言いますねえ。池内 若い連中は気まぐれで、3日やったらすぐやめちゃう。ところが年をとると、自分が作った習慣に執着するわけ。雨の日くらい、布団の中でゴロゴロしてなさい!それが本当の若さです。毎日欠かさず歩くとか、万歩計で何歩歩いたとか、そういう記録を目標にすること自体が老いのしるしだし、それを他人に自慢するのは、もっと老いている。(笑)(p.84)糸井重里の鼎談集『経験を盗め』の第3弾にして完結編。引用した部分は「歩く楽しみ」をテーマに糸井重里がドイツ文学者の池内紀とウォーキング・ドクターのデューク更家と話をしています。糸井重里『続々と経験を盗め』中央公論新社、2006年1月 、税込 1,890 円