赤瀬川原平・山下裕二『日本美術応援団オトナの社会科見学』
山下――そうですね、今日は出ていなかったけど、超有名な長谷川等伯の国宝「松林図屏風」とか、二年に一度くらい展示されるんですよ。でも、まったく展示の仕方に「どうだ感」がない。学生のころなんか、今より客が少なくて、自分の靴音しか聞こえないような静けさの中で、ほとんど独り占めでしたよ。赤瀬川―東博(引用者注…東京国立博物館)は音響が良いからね。ライカのシャッター音もよく響きました(笑)山下――ところが今年、それを出光美術館が借り出して『国宝・松林屏風図』展と銘打って、どうだ! ってやったんですよ。そしたら行列ができた。赤瀬川―ああ、いい話ですねぇ。そこは企業努力で「どうだ感」を演出したわけね。(p.76)パッケージの貴重さを物語るエピソードです。国宝の絵でこの有様なのですから、他のささいな美術品の価値を知らしめようとすると、色んな心配りがいるんのでしょう。この両氏による『日本美術応援団』シリーズは大好きです。他にも以下の5冊が出版されています。『日本美術応援団』日経BP社、2000年2月、本体価格1,800円 『京都、オトナの修学旅行』淡交社、2001年3月、本体価格1,600円『雪舟応援団』中央公論新社、2002年3月、本体価格1,800円『日本美術観光団』朝日新聞出版、2004年5月、本体価格1,800円『実業美術館』文藝春秋、2007年10月、本体価格1,714円赤瀬川原平・山下裕二『日本美術応援団オトナの社会科見学』中央公論新社、2003年6月、本体価格 1,600円