よしながふみ対談集『あのひととここだけのおしゃべり』
よしなが なんだかんだいっても、オタクな人たちっていうのは、おしゃれじゃない人もいるわけですよ。それは限られた自分の大切なお金と時間をおしゃれとは違う方向に使っている人が多いからなんだけど。でも、女の子はやっぱりおしゃれで恋をしなくてはいけませんっていう暗黙のメッセージが、常に女性向けのマンガにはあふれているわけ。それをシャワーみたいにずっと浴び続けるのは、結構なストレスだと思う。(p.122)よしなが というかね、そもそも人からお金をもらっで何かをする、しかもまだまだペーペーの人間が、自分の描きたいものだの、作家性だの言ってられるか、というのもありました(笑)。お仕事いただけるだけでありがたいって。こだか あ、それはわかる。基本的に、お金を出してもらって描いているんだ、というのがありますよね。よしなが あります。こだか 原稿料を出していただいて、コミックスをお金を出して買っていただいている。自分云々は大事じゃないだろうと思うんですよ。買ってくれた人がいかに喜んでくれるか、商業誌としてはそこが大事だろう、と。よしなが それに、結局どんなに抑えたって、オリジナリティってほっといてもにじみ出てしまうものだと思うんです。だから逆に、好きに描いていいと言われると途方に暮れます。こだか それ、こわい。よしなが こわいでしょ? ショートプログラムがいいです!って思った。フリーは怖い (笑)。フリーって言ったって、当然商業誌だから重要な要素がひとつあるの。「売れてね」って……。本当にこわいですよね。好きに描いてもいいけど、結果を出してねっていうのは、すごく責任が重いわけです。好きに描いていいと言われている以上、編集さんのせいにもできない。こだか 束縛がないということは、全部自分の責任ってことだもんね。ああしろ、こうしろって指示があったほうが実は楽。(p.126~127)よしながふみと漫画家との対談集です。抜き書いたのは、両方ともこだか和麻との対談中の発言です。羽海野チカとの対談も面白いです。お互いがお互いをいかに好きかがよくわかりました。よしながふみ『あのひととここだけのおしゃべり』太田出版、2007年10月、本体価格 1,200円