林望『風邪はひかぬにこしたことはない』
たとえば焼きたてのパンが売り物のパン屋では、とかく、パンが裸で棚に陳列されていて、それを客がトレイにのせて会計するシステムになっていますね。 パンをそのまま並べるのは、熱いパンをビニール袋で密閉してしまうと湿気が飛ばずにぐちゃぐちゃになってしまうからでしょう。 しかし気になるのは、そのまわりをお客や従業員が歩き回っていることです。 ひょっとしたら、誰かがそこでくしゃみをしなかったとも限らない。ということは、そのパンはもう食べない方がいいと私などは思ってしまいます。 神経質だと笑われるかもしれませんが、私の「心眼」をもってすれば、パンの上に風邪菌がうようようごめいているのが見える(ような気がする)。(p.62~63)「物凄くきれい好きの人は、パン屋でむき出しに売られているパンは嫌いなんだろうな」と、常々思っていましたが、私の周りの人もテレビの中の人も誰も言わないのでおかしいなと思っていましたが、風邪の菌という別の角度からこれを嫌う人がいました。…やっぱり!林望『風邪はひかぬにこしたことはない』筑摩書房、2008.11