世界最大の淡水カメ、絶滅回避なるか
世界最大の淡水カメ、絶滅回避なるかKaitlin Solimine for National Geographic NewsJuly 5, 2013 中国の蘇州動物園に暮らす2頭のシャンハイハナスッポン(学名:Rafetus swinhoei)は、この種の未来を背負っている。 シャンハイハナスッポンは国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧IA類(絶滅寸前)に指定されており、この2頭は現存する最後のつがいである。メスの産んだ卵が6月に収集され、どれか1つでも有精卵が含まれていないかと期待されている。 このスッポンは体重約100キロにもなる大型の種で、淡水の泥の中に潜んで暮らしている。かつては中国の長江、太湖、雲南省およびベトナムの一部地域で広く生息が確認されていた。 ところが人間によって生息地を奪われ、甲羅が漢方薬になるとして乱獲されたために、1990年代後半までに個体数が激減してしまった。現在ではシャンハイハナスッポンの個体はわずか4頭が確認されているのみだ。ベトナムに野生のオスが2頭いるほかは、この蘇州動物園のつがいのみである。 蘇州動物園でシャンハイハナスッポンの繁殖を目指してチームが立ち上げられて今年で6年目だが、いまだ卵が孵化に至ったことはない。 チームでは、繁殖の失敗が続いている理由を特定できておらず、複数の要因が絡んでいると見ている。オスが約100歳と高齢であり精子も劣化していることや、交尾の際の体勢が適切でないこと、メスにストレスがかかっていることなどが、問題として指摘されている。 現存する個体のうち、飼育環境にあるものはこの2頭のみで、人間の過度な干渉が原因で死に至るおそれもあることから、精子のサンプルを採取しての検証は実現していない。それでもチームは今年こそと期待している。 「淡水のカメとしては世界最大であるこの種はシンボル的存在であり、野生復帰が実現すれば希望の象徴となるだろう」と、ジェラルド・クッチリング(Gerald Kuchling)氏は話す。クッチリング氏はオーストラリアに拠点を置くカメ保護団体のタートル・コンサーバンシーの設立者で、カメの繁殖の専門家でもある。 ◆“奇跡的” な発見 多くの絶滅危惧種の場合と同様に、シャンハイハナスッポンも、個体数の深刻な減少に専門家が気づいたときには、すでにごく少数の個体しか残っていなかった。 クッチリング氏は2006年に、アメリカの非営利団体から、当時中国国内の別々の施設で飼育されていた最後の3頭のシャンハイハナスッポンの繁殖を依頼された。 しかしクッチリング氏が翌2007年に中国を訪れたときには、うち2頭はすでに死亡しており、蘇州動物園にいた1頭のオスが、中国に現存する唯一の個体となっていた。チームは国内のすべての動物園に問い合わせて、誤って別種と判断されていた個体が見つかる可能性に賭けた。 問い合わせに対して長沙市の動物園から寄せられた1枚の写真は希望の持てるものだった。クッチリング氏は野生生物保護協会(WCS)の中国支部関係者とともに現地に赴き、この個体がシャンハイハナスッポンであることを確認した。しかも、メスだった。 「メスを発見できたのはちょっと奇跡的だった」と、蘇州動物園の繁殖プログラムのフィールド・アシスタントを務めるエミリー・キング(Emily King)氏は言う。 ◆繁殖の道のりは険しい 新たに発見されたメスは当時80歳。蘇州動物園への移送がストレスになると危惧されたが、ほかに選択肢はなかった。 野生環境での調査も続けられていたが、すでに確認されているベトナムの2頭のオスのほかは、シャンハイハナスッポンの個体は確認されていない。このベトナムの2頭は、捕獲と移送が命に関わるおそれがあるとして保護できていない。 したがって、蘇州動物園でつがいの繁殖が成功しなければ、シャンハイハナスッポンは絶滅してしまう。 2008年5月、さまざまな手続きを経て、長沙のメスはようやく蘇州動物園に移された。このメスはそれまでつがいを作った経験がないと目されていたが、“嫁入り”からわずか1週間あまりで交尾が確認された。 1カ月後にメスは45個の卵を産み、うち32個が人工孵化器に移された。有精卵かどうか判定するため、チームは卵を明かりにすかして、中で胚が成長していないか確認した。 メスが最初に産んだ卵はいずれも孵化しなかった。同じ月のうちにもう1度産卵があったが、やはり孵化には至らなかった。その後もつがいは毎年交尾を行っているが、結果は同様である。 蘇州動物園では、繁殖プログラムの当初は、人工体外受精を行うことも検討していたという。しかし自然な繁殖が最も安全であるとして見送られた。なにしろ、現存するつがいはこの1組のみ。特にメスが死亡してしまえば、繁殖の機会は永久に失われてしまうのだ。 シャンハイハナスッポンが飼育環境下であとどれだけ生きられるか、そして繁殖行動を続けられるかは明らかになっていない。とはいえ専門家の見立てでは、このスッポンは100歳をゆうに超えて生きられるようだ。 ◆チームは楽観的 こうした困難な状況にありながら、チームはこのスッポンの保存について、楽観的な姿勢を崩していない。 「2頭の(シャンハイハナスッポンの)個体がいるのだし、希望的観測だが、ごく近い将来には赤ちゃんが見られるのではないか。どんな形であれ、このプログラムは継続していく。この種の存続を願う多くの人から投資を受けているのだから」と、蘇州動物園のキング氏は言う。 http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20130705001大型動物は大好きです。大きなことはいいことだ。こんな素敵な生き物が地球上から永久に失われるのは残念です。卵が孵化してくれればいいのに。しかし、卵が無事孵化したとしても絶滅の危惧がなくなることはないのですが。Wikipedia「シャンハイハナスッポン」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%8F%E3%83%8A%E3%82%B9%E3%83%83%E3%83%9D%E3%83%B3