だれも通らない
暗い路地
星がすすきの葉先を
ころころと
転がるような夜
風が幾万の葉を揺らし
葉ずれの音がして
いい匂いの
秋の空気が流れる
軽く目を閉じて
まだ浅い秋を楽しむ
何かが光った気がして
ふと足を止めて見あげた
生垣の上
おや
こんな場所で音もなく
だれが忘れた秋花火
真昼の暑さに
過ぎた時間を思い出したのか
夏を懐かしむ無声映画
鮮やかな色はないけれど
思い出はこんな風に
少しかすんだ記憶
眩しく散った
光の軌跡を思い出し
のこす放物線
しばし
秋風の中
一人楽しむ
秋風が揺らす
しずかで
地味な夜の花火