ながいこと 雨がふらなくて
心の中身
ひりひりするほど乾燥して
緑少ない心の中
ふと見ればいつのまにか
君がそこにいた
「あなたの心に
雨を降らせるよ」
君はそういって
魔法のように
雨雲を呼ぶ
はちり
はちり
君が呼んだ雨雲は
大粒の 雫を落とす
車のボンネットの上
地面に 果実の上
私の髪に 肩に
乾いていた
心の なか
雨は世界を
雨色に染め
私の髪を伝わる
螺旋のしずく
髪から地面に落ちる前に
この雨は私の記憶をなぞり
君の名前にかわり
あたらしい世界を覆う
君の雨になる
なにもなかった
土色の地面
水滴が色を塗り変えて
やがて萌えだす緑が
新鮮な空気で世界を満たすとき
私ははじめて
声をなくす魔法が解けて
唇に君の名を宿す
世界を雨に染める
愛しい名前を
空に刻みながら
ただ一人
君の名を呼ぼう