静かな夜
ふと時計を見る
気がつけば夜中の2時もとうに回って
やれやれ またか
小さくふぅっとため息一つ
外からは雨音
こんな時間じゃ
君は眠っているに違いない
ゆっくり眠っていればいいけど
そんなことを考えながら
やっとデスクから離れて
眠る前のシャワーを浴びると
ようやく長い一日が終わる
1日のしがらみを流す
あたたかいスコール
こまかい飛沫が跳ねて
不要な物を洗い流して行く
甘い香りのオレンジのシャンプー
リンスはホワイトネクタリン
シャワーを浴びている時の私は
1日のしがらみをおとして
いい香りに包まれて
まるで大きなフルーツキャンディーのように
甘くて酸っぱい果実の香りがする
今ならきっとおいしいのにね
指でつまんで包装紙を剥いだあとで
君の口に飛び込んだら
君が好きな香りを放って
いろんな表情で転がりだすのに
遠く離れた今は
食べさせてあげられないのが
ちょっと残念
ちいさく くすりと笑う
背中を滑る水の流れつたって
落ちた先 水色のタイルの上の水たまり
漣の上で外の雨音が小刻みに揺れる
シャワーのスコールの音と
雨音が響いて
バスルームの中は
幸せな音楽が満ちる
ただひとつ
もう一人の奏者が
不在だけれど
君の空にも雨が降るなら
雨の雫つたって
眠る君の耳にもかすかに届く
梅雨空もそう考えれば
幸せな空模様
ノズルをひねって
お湯を止めたらバスルームを出よう
3時間後にはまた朝が来て
慌しい一日が回りだす
長い長い髪を風に当てて乾かしたら
ラグを敷いた床に横たわろう
君が居ないのなら
ベッドに眠る意味はすでにないから
明るくなった空を見上げながら
硬い床の上
うつぶせてしばし瞳を閉じる
3時間後の朝のために
君とまた
繋がる日に近づくために
ネット詩誌 MY DEAR
新作紹介掲載作品
主催者・島様に感謝