静かな夜 水の匂い漂って
いつしか窓の外は雨
季節ごとに
変わる雨音
春
やっとほどけた空気に
背伸びを始める緑のうえ
柔かさを確かめながら
安堵するように着地する音
やわらかくはたはたと
夏
熱気に膨らんだ地上に
力を全て抜いて落下する大粒
熱で際限なくゆるんだ空気に
音の輪郭滲んで
ばたばたと
時にぼつぼつと
秋
生きる力あふれる深い緑から
命を終える葉の身支度の彩り
やがて落ちる枯葉をたたき
空になった命の上に落ちる音
はつはつと
冬
ぴしりと凍てた空気
なにもかもが寒さに身構え
心さえ開かぬほどに
かたく張り詰めた世界の上
無常を嘆くように落ちて来る音
ちたちたと
時にはちはちと
あぁ そして
冬にはもう一つ
悲しみも辛さもかくすように
世界を白く覆う冷たくも優しい綿毛
いつかとける約束の
雪が散る音
はさりはさりと
季節ごとに流れる空気で
音こそ違うけれど
どの雨も大好きで
どの雨も愛しい
植物が甘雨を浴びて
命を萌やすように
私の心も
雨音を聴き
雨を浴びて生きる
植物のように
空を見上げて
大きく背伸びをして
空に恋しながら
ネット詩誌 MY DEAR
新作紹介掲載作品
主催者・島様に感謝