通り過ぎた
花の前線を追いかけて
空を飛ぼう
葉桜から満開の花を飛び越え
五部咲きの花を目指す
少し息詰まる離陸のG(圧力)は
季節を飛び越える圧縮された空気を
くぐり抜ける時間の悲鳴
急な角度で踏み切る
高飛びの陸上選手のように
地面に張り付いた街を離れる
硬い鉄の翼
旅立ちは 晴れ
どんなにどしゃ降りでも
行く先を見据えて
大地を蹴って踏み出せば
雲の上は
何一つ混じるもののない青空
雲を抜けたら
飛行機雲の軌跡
大きく空に描きながら
私も空の一部になる
冠雪した峰を見下ろして
ただただ青い海を飛び越えて
降り立った場所は
季節を巻き戻した
初春の花咲く場所
空港の到着ロビーを
通り過ぎれば
ほら
私が住む街から
通り過ぎた季節が
桜色に街を染め
両手を広げて
私を抱きとめる
青い空で繋がった場所
はじめて踏み出す
見知らぬ街の 春
ネット詩誌 MY DEAR
新作紹介掲載作品
主催者・島様に感謝