丘の上
街を一望に見下ろす
空が近い墓地
焼けるような
真夏の風が
少し 吹き止まって
私は 歩みをとめて
空を見上げる
やがて動き出した風が
汗ばんだ肌を撫でて通り過ぎ
わずかに火照りを冷ましながら
季節の移ろいを告げる
桔梗 刈萱 女郎花
華やかではないけれど
季節と言う一冊の本の
章がかわるページの栞
静かな花々と
少し苦い酸漿の香り
まだ若い林檎や梨
桃や葡萄の香り
うすい薫香で編んだ
レースが包み
心だけになった
愛するものたちに手渡す
久しぶりに会う
縁故の人たち
心だけになった大切な過去の人と
肉体を持ってうまれてきた
新しい命
同じ空間で時を過ごす
年に一度の懐かしい時間
思い出話を薄く縁取る涙は
悲しみではなく
思い出に寄り添う
いとおしさや切なさ
過ぎる季節が
すれ違うときに見せる
愁いを帯びた横顔に
少し 切なさを増して
遠く 読経が聞こえる夕暮れ
赤とんぼが
すぃ と
新しい季節の
涼しい一陣の風に乗った
ネット詩誌 MY DEAR
新作紹介掲載作品
主催者・島様に感謝