いつもふざけてばかりの
君と話していて
ちょっとした言葉のあやで
贈り物をすることになった
いろんなことがたくさんあって
毅然としていなければ
折れてしまいそうで
固く張った糸が緩められなかった
私という楽器
その楽器を見つけて
少し緩めてみたり
逆に緩みすぎたところを
少し張らせたりして
音色を修正した
調律師のような君
季節柄もあって
よく目にする華やかなパッケージ
その横にある
至極シンプルな包装の
外国製のただの板チョコ
「いろんなものが入ってるの
苦手なんだよね
素材の味がそのままなのがいいの
ストレートでシンプルなのがベスト
普通の板チョコ以外いらないからね」
気遣いか
本音なのかは
本人のみぞ知る
大人の気遣いに甘えながら
小さなお酒の瓶もひとつ
これは私からの
大人の気遣い
味も香りも感じられないほどに
こちりと固く縛っていた
黒檀色の四角い塊が
あたたかい君の温度で
少しずつ角を落とし
やわらかく溶け出して
複雑な甘さと苦さで
香りまで放ちだす
2月半ば
遠い春の足音聞こえる
ディスプレイの向こう
まだ見ぬ笑顔ひとつ
ピアノを弾くように
キーを叩く音がする
ショコラフレーバー
ひそかに香る部屋
2010.2
ネット詩誌 MY DEAR
新作紹介掲載作品
主催者・島様に感謝