人の心は
傷つきにくいようで
意外にも傷つきやすく
案外 脆い
ついつい見過ごしてしまう
最初はちいさな
棘がひとつ刺さっていて
ちいさなちいさな
棘だからこそ
だいじょうぶ このくらい
そういって甘く見ていると
予後が悪い
心も体も
似たようなものね
そうだよね
どっちも
「ひと」のものだもん
大きな怪我は
はなから痛いものだと
覚悟は出来るけれど
目に見えぬほどの
細いガラスの繊維のように
細くしなやかで堅いものほど
見えないのにちくちくと
もどかしさは 強くなる
刺さったとげに
ほんの少しだけ
「私は悪くないのに」
と思う気持ちの頭をなでて
軽くいなしながら
「ごめんね」
そっと先に自分から抜いてあげられる
そうありたいなと思うけれど
いつもうまくいかない
今度も そう
ちいさな棘を
抜かずにそのままにしておいた罰は
傷が熱を持って化膿するほどに
悪化させてしまった
見かねて手当てをしてくれた人が
これは痛そうねという顔をして
「ほうっておいた時間の分から
治る日にちは倍もかかるのよ」
そう言っていた
あぁ ほんとだ
心も体も同じなんだ
どっちも「ひと」のものなんだ
再確認してため息 ひとつ
次からは
何事にも手当ては早いうちに
そんなことを思いながら
熱を持ったいろんな傷口に
保冷剤を当てた
早く治さなきゃ
傷が癒えたら
笑顔で やさしく
素直な気持ちになって
誰かの棘を抜きに行こう
2010.9
ネット詩誌 MY DEAR
新作紹介掲載作品
主催者・島様に感謝