本当にあった怖い話(厨房編)
増税前の最後の週末とあってか(関係ないか)、店はランチもディナーも大混乱だった。上を下への大騒ぎの中、ふと次のご飯を炊いてないことに気づいた。慌てて米を炊飯器にセットし、点火の確認をしたあと持ち場に戻ってしばらくしたあと、バイトの濱田さん(←仮名)が、「〇〇さん(←私)、ほんこわなんですけど、火が点いていません!!」飲食店にとってこんな恐ろしいことがあるだろうか。点火からご飯が炊けるまでは40分かかる。すでに次のオーダーでご飯が足りなくなるのがわかっているのに、どうしたらいいんだ!!とりあえず他の洗米を出してきて、鍋焼きうどんで使っている土鍋4つに分けて、調理場のガスコンロで炊くことに。その間に、私はエプロンを脱ぎ捨て、「サトウのごはん」を買うべく最寄りのスーパーマーケットに自転車を走らせた。息を切らせて戻ってみると、土鍋のごはんが炊きあがっていて、どうにかオーダーに間に合った。その顛末を洗い場で見ていた三女。ちょっと落ち着いたころ、「お母さん、どうしたの?」と訊いてきた。「ご飯を炊いてたつもりが、火が点いていなかったんだよ」と言うと、「コワッ」と言いながら洗い場に戻って行った。誰にでも失敗があることを知って、ちょっとホッとしているように見えた。