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2,722本目は一塁手の脇を抜く彼らしい右方向の打球だった。 一塁に到達したジーターに雨具に身を包んだスタンドのファンはスタンディング・オベーション。 チームメイトが駆け寄りひとりひとりとハグをした。 いつも饒舌なマイケル・ケイもここは沈黙が金であることを知っていた。 遠慮深い松井は最後に抱き合った。 今日は2001年の9.11に因んで赤いキャップが義務付けられていたが、 それが誰よりも似合わないことを知っている松井はかぶっていなかった。 偉大な瞬間を演じたジーターの顔は普段に増して凛々しい。 しかしこの記録更新で将来ジーターがヤンキースの歴史で伝説的な打者として 語り継がれるかと言うと、そういう実感が何故か湧かないのだ。 ZIPHITなんて怪しげな商品の通販のCMに出ているからだな・・・(>_<) 恐らく最大の理由はジーターをリアルタイムで見ているせいだと思う。 ベーブ・ルース、ルー・ゲーリッグをはじめミッキー・マントル、ジョー・ディマジオは リアルタイムでプレイを見ていない。 白黒のフィルムや映画化された中で既に伝説化された存在となっているのだ。 ジーターが‘大打者’という印象が無いのは長打が少ないからだろう。 ホームランと打点では歴代10位に過ぎないし、SLGでは30位だ。 ジーターの初グランドスラムが‘難産’だったのは有名な話だ。 2005年に‘136度目の正直’に恵まれたが、それ以来2本目が生まれていない。 じゃあ、満塁で弱いかと思いきや打率は3割5分ぐらいあるから鬼と言ってもいい。 私は2003年以降なら誰にも負けないくらいヤンキースを追いかけているが、 それ以前、特に90年代後半の4度のワールドシリーズ制覇を知っている人達の ジーターの印象は異なるかもしれないと思っていた。 ところがそうでもないらしい。 YESがこの前やっていたジーターの印象深いシーン4択アンケート。 ダントツの1位(44%)は2004年のBOS戦でファウルボールを追いかけて 内野スタンドにダイブしたプレイだった。 ジーターの真似をして顔にバンドエイドを貼った少年の姿を覚えている人も多いだろう。 同様のアンケートをDailyNewsが6択でやっていたが1位を分け合っていたのは、 あのダイブと2001年のALDS(対OAK戦)で見せた絶妙な中継プレイだった。 どちらも打者としてのジーターではないのだ。
ジーターはヤンキースの歴史の中でどう位置づけられるのか。 或るヤンキース番記者の個人的ランクでは6番目になっている。
これに関するコメントを見ても、1~5に関しては異論が殆んど無い。 実際あと100年経っても変わらないのかもしれない。 伝説は時の経過とともにさらに伝説化が進むからだ。 6位以下についてはBernie WilliamsやDon Mattinglyを推す人もいるし、 あと将来的にはJorge Posadaも入ってくるのではと予想する向きもあった。 まあこのランキングに私が口を挟む資格は無い。 ジーターに関して私の個人的な印象は‘The Great Yankees’ Captain’だ。 数多くの大物選手が来てはいなくなるチームの中で見事なリーダーシップを発揮していると思う。 色々なコメントを聞いてもウィットに富み如才無い。 ユーモアのセンスも持ち合わせている。 Derek is a team guy. チームの勝利こそが最優先という姿勢にブレが無い。 だから他の個性の強いチームメイトにも受け入れられ、数多くのファンからも愛される。 2009年のジーターにとって今日の個人記録達成は大きな意味を持つことは確かだが、 彼の本望はキャプテン就任以来一度も手にしていないチャンピオン・リングにあることは 言うまでもないだろう。 松井が何かいいことをしてベンチに戻ると、ジーターが頭をナデナデしてくれる光景を 見るのが好きだ。 それが来年以降見られなくなると思うとやはりそれはそれで淋しい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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