色褪せたもの、色づくもの
生暖かい風と共に、一年くらい前の大切な思い出が蘇る。あの時流れていた曲を聴くと、ポロッと涙が零れた。今でもはっきりとした輪郭を思い出すことが出来る記憶は、音にこびり付いて離れない。それでも少しずつ、キラキラしていた記憶が色褪せていく様子が感じられて、切なくなる。過ぎてしまった時間を取り戻すことは出来ないけど、素敵な思い出はいつまでも、私の心の中で光っていてほしいと思った。新しい思い出に塗り替えられていく色たちを茫然とめる私は、今でも複雑な想いのやり場を探している気がする。散り行く桜を見ながら、去年見た夜桜を重ね合わせた。一年前とは全く違う環境と土地にいるのに、地面に散った花びらたちのピンクは、去年見たピンクと同じ色をしていた。