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カテゴリ:書評
今年に入り、
柄にもなく勉強なんぞを始めてしまった関係で、 最近、 ここに本の感想を書く機会はめっきり減ってしまったが、 ちょうどたまたま読み終わった本が 歌野晶午「絶望ノート」。 タイトルからも、表紙からも、 そして暫く続く本書の内容からも、 まさに絶望的なムードが漂っており、 作者のを知らない方などのいわゆる『一見さん』であれば、 恐らく相当の確率で読破に 挫折してしまうのではないかと思われる。 というのも、初っ端から暫くの間、 いじめ被害に遭う中学生の絶望的な独白が ずーっと続いていく。 いじめは巧妙で救いはなく、 これが最後まで続くのかと思うと、 まさに絶望して、読み続ける意欲がなくなる。 しかし、ご存知でない方のために断っておくと、 歌野晶午という作家は教育問題研究家でもなければ、 新手のブロガーでもない。 ミステリー作家であり、 本書もまた、正真正銘のミステリーである。 ということで、話は少しずつ動いていく。 人がいじめに遭った場合、 『加害者がいなくなれば(死んでくれたら)良いのに』と 思うものだが、実際にはそんなことはなかなか起こらない。 がしかし、本書では起きてしまう。 ただし、実際に手を下したのは被害者本人ではない… こんなことを書いても、 大して面白そうには聞こえないかもしれないが、 実際読んでみると、 非常に面白い仕掛けが施されており、 それがこの作者の持ち味であることを再認識する。 かなりお奨めできる作品だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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