amico to amare(獄ツナ 10years later)
彼と離れて過ごす時間が辛い、と。ツナがそう気付いたのはごく最近のこと。獄寺が任務で二ヶ月間ローマに出ていた時だ。たったの二ヶ月間――――そんな、普通なら短いと言える筈の期間がとてつもなく長く感じて。それまで、10年も一緒にいて、同じ時間を過ごしてきて、獄寺がツナの傍から長期間離れることなんて一度もなかったし、それどころか片時も離れずいつも隣で「10代目!」と言って優しく笑ってくれた。そのせいか、淋しいと感じる期間なんてありもしなかったのだけれど。その任務というのがボンゴレ10代目の手柄に繋がる仕事であるならば、獄寺は断ることなど出来ない。渋々彼はツナの元を離れ、任務を果たしに出掛けた。「すぐに戻ってきます、必ず」真剣な瞳で言ったこの言葉を残して。ツナにとってその二ヶ月間は、考えていたよりも遥かに長く、自分の中に眠る感情を明確にするには充分な時間だった。* * *「お帰り、獄寺君」ツナはそんな淋しさを顔に出すこともなく、いつもと全く同じ態度で獄寺の帰りを迎えた。「はい、只今帰りました、10代目」二ヶ月前と同じ、笑顔。獄寺はツナに一番に迎えて貰えたことが嬉しかった。ツナと声を交わすだけで、二ヶ月もの長い期間が嘘のように埋められる。獄寺は、やっと飼い主にめぐり合えた仔犬のように目をうるうるとさせながら、ただいまを言った。ツナの座る椅子の後ろ、開いた窓から流れ込んだ風が、カーテンと共に彼等の髪をさらっと揺らす。獄寺は、旅先で起こったことを逐一報告した。獄寺がツナと離れて違う土地を訪れた時、帰ってくるとその場でのことを全て報告してくれる。それはいつものことで、ツナも快くそれを聞いていた。これもいつものこと。特に獄寺から聞くそれぞれの街並みの話は好きで、その個々の場所の情景を話せばツナは身を乗り出して瞳を輝かせた。「10代目にも見せたかったッス」今度は一緒に見たいという気持ちを込めて、獄寺はいつもニカッと笑ってそう話す。10代目と一緒に見た方が絶対綺麗だと思うんです、と今にも飛びつきそうな勢いで話すのを見て。あぁこの人はオレのこと本当に大好きなんだな、と全身に伝わってくるのを感じる。ニヤけてしまう顔を少し抑えて、ついに開かせた唇――――「ねぇ、獄寺くん」そう、彼は本当に犬のよう。主人に忠実な…だけど、そうじゃない。君は言葉の話せない動物なんかじゃない、れっきとした人間で。思ったことをちゃんと言葉にして伝えられる相手なんだ。伝えていい相手なんだ。たとえ、上司と部下という関係であっても。「オレ――――君が好きだよ」ザワッと窓の外の木々が揺れる。一瞬の沈黙が流れて、しかしそれを先に破ったのは獄寺だった。「じゅ、じゅじゅ10代目ッ?!!」おどおどとした表情で、何があったんだとか、熱でもあるのかとか、失礼なことばかり並べると、ツナの肩を掴んでぶんぶんと振る。それでも久しぶりの獄寺との接触に、ツナはドキリとするのを感じる。二ヶ月前と同じ2人の笑顔。それは変わらない。でも違うのは、ツナの…心。離れてた時に感じた獄寺への気持ちを正直にかつ正確に話すと、獄寺は真っ赤になって口を押さえ肩を震わせていた。出逢った10年前のあの頃の華奢な肩幅より、少し大きな逞しいそれ。「あの、ね。君に触れられることすら…ドキドキするんだよ。変…だよ、ね」「っ、そんなこと…!オレは…そんなの、もっと前から…」「うん…でもオレは…凄く不思議、だよ」自分の気持ちに気付く前と後、こんなにも意識のいく場所が違うなんて知らなくて、一番動揺してるのは獄寺ではなく自分なんじゃないかと思う。でも、触れてドキドキするのは獄寺も同じなのだと聞いて、少し安心した。感じたこともない、気持ち。ついこの間までは、きっと知ることもなかった気持ち。彼が自分の傍を一度でも離れなければ、気付けなかった気持ち――――「これって、恋だと思ったんだ。ちゃんと恋って呼べるものだって」「じゅう、だい…め」獄寺は今にも泣きそうな顔で一言。彼が驚いてしまうのも当然だ。やっとの想いで任務を終え、いつものようにボスに挨拶へ来て、報告し、もちろん何の問題もなくいつものように退室する筈が――――そこで突然の告白を受けるなんて誰が考えるというのか。しかし想い人からの思いがけない告白を喜ばない者などいない。獄寺は精一杯の思いで言葉を紡ぐ。「オレ、は…貴方がオレのことを何とも思ってなくたって、ただの部下の一人としてしか見ていなくたって、たとえ他の誰かを…見ていたって……っオレは………貴方が好きだって…そう思っていましたでも、やっぱり訂正させて下さい」ツナをしっかり見据えて、獄寺は続ける。「―――――貴方がオレを好きだったら、もっと嬉しいです…」頬を真っ赤に染めた獄寺は、そっと左下へ視線を落として切なく笑った。「うん…。好き。オレは…獄寺君が好きだ…」いつもは頼り甲斐のある腕が、肩が、今日はとても頼りなさ気に見えた。でもそうさせているのは紛れもなく自分で、不謹慎かもしれないけれどそんな小さなことにさえ喜びを感じた。そんな獄寺に手を回して、一回り小さなその腕でふわりと抱きしめる。「今頃気付いて、ごめんね」ポトリ、と涙が零れ落ちた。(今のはオレの?それとも獄寺君の?)もうそれすらも分からないくらい、二人は抱きしめ合った。愛しいと思った。時折聴こえる、10代目、10代目、という声と、ツナを強く抱きしめる優しい腕。ツナを護る為にあるといった、この逞しい腕を。「 Ti amo , Hayato …」長い年月をかけてやっと気付いたこの想い。今更もう君を離したくないなんて、我侭かな―――――――***あの、すいません。まず…すっげー恥ずかしいミスをしていました。一生の恥です。仮にも元英語科!!死んだ方がいいかも知れない。全部書き直しました。気付いてた方ももうホンット忘れて下さい。さて、前ちょっとだけ書いたamico to amareの続き、獄ツナver.です。ツナ獄っぽく見えても獄ツナです(笑)山ツナver.を書くとしたら、もうちょっと友情っぽくなるかも…って書いてて思いました。個人的には獄→→→→→→←ツナな感じが好きです。この話、ツナがすっごい獄寺君好きみたいですが、獄寺君はこのツナの想いの10倍くらいはツナのことが好きですよ、きっと。“amico to amare”は、「(獄寺君が)友達から愛する人(へ変わった)」って意味で付けました。イタリア語は全く分からないです(苦笑)