カテゴリ:本、雑誌、記録
2019年2月24日、日本文学研究者のドナルド・キーンさんが亡くなられました。96歳でした。日本文学を英語に翻訳され、世界に紹介されておられました。
私は1991年にオランダに赴任したのですが、翌年、ドイツ事務所の女性から手紙をいただきました。日本の俳句に興味があり、有名な俳句を紹介して欲しいとの事です。俳句に関する本を持参していなかったので、すぐに思い出せる、個人的に好きな松尾芭蕉の俳句3首を英語で紹介しました。 選んだ句は「古池や 蛙飛びこむ 水の音」、「しずけさや 岩にしみいる 蝉の声」、「荒海や 佐渡に横たう 天の川」です。俳句の読み方をローマ字で書き、その背景を書いてみました。 山形県立石寺(山寺)の「しずけさや 岩にしみいる 蝉の声」については、ドイツに蝉がいないのではないかと思い、Japanese cicadas として蝉の絵を描き、地下に7年生活し、地上で1週間鳴いた後に死ぬとコメントをつけました。蝉の声が山の岩に広がるというような説明を入れたのですが、俳句自体をどのように訳すれば良いか自信が無くて書けませんでした。 帰国した後、たまたま本屋で「英文収録 おくのほそ道 松尾芭蕉 ドナルド・キーン訳/講談社学術文庫」を購入して立石寺の英文俳句を読みました。(p120) " How stilⅼ it is here - Stinging into the stones, The locusts' trill " このような英文俳句を書けば良かったのかと思いました。蝉については "Cicadas"ではなく "Locusts"が使われており、蝉ではなくバッタをイメージしたのですが、辞書で調べるとアメリカでは"Locusts"で蝉を表すと書いてあり、17年ゼミは "Seventeen-year locusts" となっていたので納得しました。 ドナルド・キーンさんの本は、太平洋戦争辺りの出来事にすごく興味があり、少しずつ読んできました。 ↑ the japan times 2019年2月25日付 ↑ ”Japanese literature scholar Keene dies at 96” 「日本文学研究者のキーン博士が96歳で逝去」。 米国生まれの著名な日本文学研究者であるキーン氏は、日本の有名な作家の作品を海外に紹介してきたが、この日曜日に心不全のため、東京の病院で死去した。96歳だった。 2011年3月11日の東日本大震災と津波により、東北地方の沿岸は大打撃を受けたが、それらにより直面する困難を見て、2012年に日本国籍を取得した。 キーン氏は多くの日本の作家や学者と深い付き合いがあった。例えば故人であるが、三島由紀夫氏、ノーベル文学賞受賞者の川端康成氏、そして谷崎潤一郎氏である。 日本文学や文化を研究する学者達の中でも一目置かれていたキーン氏は、英語、日本語、その他ヨーロッパの言語で、何百もの本を出している。その中には、約20年以上も書き続けてきた日本文学の歴史全巻を含んでいる。 キーン氏の翻訳は、古典と現代作品の両方があり、能と近代小説も多い。。 1922年、ニューヨーク生まれ。18歳でコロンビア大学生の時、源氏物語の英訳本を読み、日本文学に魅了された。11世紀の前期に紫式部により書かれた源氏物語は、帝の息子が主人公の恋愛物語であり、一般的に世界で一番最初の小説とされている。 1940年にヨーロッパで始まった戦争に言及され、「私は源氏物語に没頭することで、戦争の新聞記事や私の周りの世界から逃避することができた」、そして「源氏物語は、面白いストーリーや興味深い登場人物がいるだけでなく、自分が現に住んでいる世界と比較して、物語の世界はとても文明的に思えて大変感動した」と、2009年のジャパンタイムスのインタビューに答えている。 キーン氏が第二次世界大戦中、アメリカ海軍の日本語通訳として従事していた頃、多くの日本人捕虜への尋問をして、日本兵が残した日記を訳しているうちに、現代日本への興味も高まってきた。 「平和主義者として、戦争に参加する気持ちは無かった。しかし、海軍に入隊することになってしまうが、日本語の習得に全力を注ぐ事が出来る生徒になることを望んだ」と、1994年に出版された自叙伝である"On Familiar Terms"に書かれている。 ↑ 2019年2月25日 朝日新聞。 ↑ ドイツの女性に芭蕉の俳句を紹介した手紙の下書き。 1992年9月8日になっている。 ↑「英文収録 おくのほそ道 松尾芭蕉 ドナルド・キーン訳/講談社学術文庫」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019.03.10 13:39:15
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