[月曜日の嘆き]
月曜は過去の経験や災難を書いているのですが、今日は個人的にも強烈な嘆きです。
あんまり暗くないように書くのが腕の見せ所なのでしょうが、自信がないので、
危険を感じたら、即、他のページにテレポートしてください(笑
それは僕にとって、中学生活最悪の思い出です。
中学校で、定期的に歯医者がきて、歯を見てくれる--いわゆる歯科検診ですが、
今の中学校でもやってるんでしょうか?
「AがC、BがC、はんたいそく、6番まる~」
保健室に連なる列に待ちながら、歯医者さんの声が聞こえてきます。
僕は昔から、歯医者さんとは相性がよくなくて、いい思い出がありません。
なので、順番が一人一人前になっていくたびに、僕の緊張度は上がっていきました。
冷や汗が出て、心臓の鼓動のボルテージが上がっていきます。
震えるぞハート! 燃え尽きるほどヒート!
歯医者さんの姿が見えてきました。
いかにも権威がありそうな、50前後と思われる男性の先生でした。
傍らに助手をしている看護婦さんが立っています。
ああ、注射も緊張しますが、歯科検診もめちゃくちゃ緊張します。
いつのまにか、あと3人で、僕の番です。
クラス事に並んでいるたので、いま、僕の前後に並んでいるのは、同じクラスの
生徒でした。
歯医者さんが、前の男子生徒の口を明けさせ、銀色の器具をカチャカチャさせながら、
あの言葉をくりまえします。
「AがC、BがC、はんたいそく、6番まる~」
渋い声です。
きっと、何年も年季をつまれた、信頼できる先生なのでしょう。
もう、覚悟をきめました。
なんとでもしてください先生。
そして、とうとう、僕の番です。
歯医者の先生の前の椅子に座り、口をあけました。
銀色の冷たいヘラを口に入れ、歯医者による検診がはじまりました。
「...醜い顔だねえ」
「...は?」
「醜い顔だよ!」
最初、僕は何を言われたのか理解できませんでした。
醜い?
そ、そりゃ、僕がゲスで見られた顔をしていない事など百も承知です。
女の子にもてたことなどありゃしません。
(高校の時に一度、告白された事がありましたが、それは別の嘆きネタで)
だ、だけど、醜い?
そ、そこまでいうか?
歯医者になんでそんな事言われなきゃならないんだ?
怒りが心の底から湧いてきました。
「はあ」
「醜い顔だよ、ほんと」
でも、真の問題はここからだったのです。
僕の後ろには同じクラスの生徒が並んでいるのです。
小声で笑い声がきこえるではありませんか!
「あいつ、醜いっていわれたぜ」
「醜いだって」
TVのバラエティ番組で、よく、身体的特徴をネタにして笑いを取る事があります。
まあ、お笑い芸人とかなら、いいんじゃないでしょうか?
だが、それらをTVで見た視聴者にとって、「身体的特徴」を笑いにつなげた事は
罪の意識をとっぱらう事になっていたのかもしれません。
残酷な笑いです。
その残酷な笑いの対象に、自分がなったのでした。
怒りを通り越して、悲しくなってきました。
「横向いて、TVを見ながらご飯を食べてるだろう。そのせいだ」
「はあ」
検診を終え、僕はその場から逃げ出しました。
トイレに駆け込み、ガラスを見ます。
まあ、前から気がついてましたが--両目の位置の上下が、ややずれています。
かるく顔がゆがんでいるのは承知していました。
まあ、歯医者はそれを言いたかったのだと思います。
TVを見ながら租借したのが顔が歪んだ原因だと。
(まあ、真実は、右奥歯が虫歯で、左奥歯だけで物を噛んでいたのが原因だと
思いますが)
しかし、クラスのみんながいるまえで、「醜い」はないでしょう...
案の定、クラスに戻ったら、陰口の対象です。
「あいつ、歯医者に醜いって言われたんだぜ」
「ねえ、聞いた?」
ショックだったのは、友人にも面と向かって言われた事でした。
「そういえば、こいつ、歯医者に醜いって言われたんだぜ」
思わず、醜いアヒルの子の物語を思い出しました。
けして白鳥になるわけではありませんが(笑
中学2年の時だったと思いますが、辛かった思い出です。
時が解決してくれるまで...