中之島公園の猫たち-SAVE THE CATS IN NAKANOSHIMA PARK-

彼は、いつも思う

『なぜだろう、撫でられるのは好きなのに…
いつも、自分はビクビクしてしまう』

手を差し伸べられる瞬間
ギュッとお目々を閉じながら
身構えてしまう自分

大きな体を思い切り小さくしながら
ペコリ
やっぱり下がってしまうのが
大きなお耳

『だから、いつも写真を撮られると
お耳の小さな猫みたいになってしまうんだ』

彼は、少し考える

『公園にいた頃も、やっぱりみんな
ボクのお耳は小さいと思ってただろうな…』

ご飯をもらっていたSさんには
いつも撫でてもらったけれど
やっぱり怖々、ビクビクのぺっぴり腰
それが精一杯の甘え方

大きな体に、長い尻尾
いつも、ちょっぴり眠たそうな
愛嬌のあるお顔

見た目は強そうにも見えるのに
気が弱くて、怖がりなタマちゃん
いつも、お耳が下がり気味

お寝坊さん具合は
以前より、かなり改善されているのですが
それでも、やはり明るい時間帯は
ボーッとした状態が多く…

「あの、タマちゃん、起きてます」
「おーい…」

『…』

このような調子が続く
のんびり屋さんでもあります



本当は、落ち着ける箱の中で
居眠りするのが好きなのですが…

たまに作業場が見える棚の上なんかで
ウトウト、まどろんでいたら
ご飯チェックにやって来たビビに踏んづけられたり
甘えようとやって来たフクちゃんに驚き
見事に、床へ落下してしまったり

「タマ、いいのか、それで…」
「うん、行く末が不安だよ」

それは、彼だって考える

『何でボクは、こんなに怖がりなんだろう
冷静に考えたら、もうビクビクしなくてもいいのに…』

撫でられるのは、気持ちいいこと知ってるけど
小さな頃から、たくさんの人たちに撫でられて
育ってきたわけじゃない…

だから、どうしても
身構えてしまうクセが抜けない

でも、彼はちょっぴり成長した 

『これでも、随分とマシになった』

目が覚めたら、急にお腹が減ってきた…
そんな時は、思い切ってスリスリ
ちゃんとお耳を立てたまま
催促してみることもある

しかし…



ゴシゴシ、撫でてもらって
とっても嬉しくて、スリスリ

でも、ふと我に返ったら
反射的に棚の下に逃げ込んでしまう
手招きされても
ついつい尻込みしながら隠れてしまう
やっぱりお耳も自然に下がる

『うーん、おかしいな…』

お寝坊のタマちゃん
すっかり目覚めたのは、日も暮れた頃
トコトコ、動き出す
夜の番長

「でも、番長とは名付けたけど…」
「うん、最近はリリーのほうが強いからね」

くーちゃんは、お部屋に戻り
フクちゃんも、ぐっすり眠っているから
ちょっぴり安心

目覚めのご飯をゆっくり食べて
一人で、こっそり遊んでみます

昼間、落っこちた棚の上に乗って
秘書たちが作業場から振るおもちゃにも
ちょいちょい、ちょいちょい

「ほらほら、一人で遊ぶより楽しいでしょう」
「こんな時は、耳下がってないね」

お耳が下がったり
我に返って逃げ出したり
驚いて、床に落っこちたりもしますが…

構ってもらうのは、決して嫌いじゃないです
本当は、楽しいことが大好きなんです

「そうだ、タマちゃん、好きな人がいるんだよね」
「そうそう、態度が違うんだよね」

そう、彼には気づいたことがある

『あの人の前だったら、お耳も下がらない
なぜなんだろう…』

日曜日、お昼からやってくるKさん
いつも静かで穏やかで、とても優しい人

彼は、不思議だった

『あの人は、ボクが落ち着ける空気を持ってる
人には感じたことのない空気なんだけど…』

ここに来て、撫でてくれる人たちは
みんな優しい手をしてるし
できるだけ驚かさないように
気遣ってくれるのは伝わるけど…

Kさんが撫でてくれる時は
まるで、お母さんかお姉さんが
眠る前の毛づくろいをしてくれる時みたい

ゆっくり背中を撫でてもらうと
下がっていたお耳も、ちゃんと元に戻ってくる

『あの人は、もしかしたら…』

「そういえば、前にミーティングで言ってたよね」
「うん、的確な表現」

去年のミーティング
司令塔Aさんは、Kさんのことを
こう言っていました

「Kさんは、猫です」

いつも「猫の部屋」に溶け込んでいるKさん
確かに、大きな猫のよう

気が弱くて、怖がりなタマちゃんも
お耳をあげていられるようです

「中之島公園猫対策協議会ＨＰ」 info@nakanoshima-cats.com
「中之島公園の猫たち」 nekomat@nifmail.jp

日曜日のお当番Kさんは、とても穏やかな人
仲間たちの中に入っていると、確かに大きな猫のようです
タマちゃんだけでなく、猫という生き物は
ゆったりした空気を漂わせた人が好きです
同じ目線の静かなトーンで接してくれる人に
安心感を覚えるのでしょう

人と人、猫と猫、そして人と猫…
同じ空気と同じ波長を持つ者同士で過ごせれば
きっと幸せを感じられるのだと思います
そんな出会いがたくさんありますように…

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