中之島公園の猫たち-SAVE THE CATS IN NAKANOSHIMA PARK-

日が暮れると
まだ気温の下がる日も多いですが
お昼間は暖かくなってきました

「猫の部屋」では
伸ばしたお手々だったり
垂れ下がった尻尾だったり
いろんなものが
ニョキニョキ、プラプラ

「…」
「春だねえ…」

暖かい春の陽射しに
緊張感ゼロの仲間たち

のほほんとした風景が
見られるようになりました

棚の上から
ちょこっとお手々をのぞかせて
いつものアンニュイな表情

お気に入りの箱からニョッキリ
はみ出しているヒロコちゃん

「あ、ヒロコだ…」
「暖かいもんね」

プクプクしたピンクの肉球を見せながら
横たわるヒロコちゃん
棚の下にいる秘書たちの動きを
お目々だけで追っています

大きなお目々が印象的で
キリリと整った顔立ち
ヒロコちゃんは
いつでも美しいのですが…

ちょっぴり細めたお目々に
しどけないポーズ
何となく、気だるい雰囲気

実は、こんな表情をしている時の彼女が
いちばん素敵だと
私は思います

「うーん、今日もきれいだね」
「…」

アンニュイな表情のヒロコちゃんに
ぽーっと見とれていた秘書たちですが
よく見ると、彼女の右腕には
黒っぽい物体

それは、何となく
ヒロコちゃんの腕を
キュッと掴んでいるようにも見えました

「黒いね…」
「うん、黒いよ…」

箱の中をのぞき込んでみると
謎の黒い物体は
ヒロコちゃんを押し出すかのように
２／３ほどのスペースを占領

ジッとのぞき込んでいても
何だか真っ黒過ぎて
シルエットしか見えず…

しかし、すでに秘書たちは
その黒い正体に気づいていました

「やっぱりな…」
「アンタ、ヒロコを捕獲してるの」

黒猫ノア
大のヒロコファン

見た目はボス猫のくーちゃんに
とてもよく似た男の子ですが
中身は正反対

箱の奥にピタリと張り付いていたり
誰かの陰に隠れていたり
まるで忍者のようなノア

彼が本気を出してかくれんぼを始めたら
真っ黒なことも相まって
なかなか鬼には
見つからないでしょう

しかし、最近では
ごく普通に寛ぐようになったので
お昼間に姿を見かけても
いちいち秘書たちは驚かなくなりました

「しかし、相変わらずだね」
「その気持ち、通じるのかね…」

なんとなく…
ノアにくっつかれた彼女の体が
退け気味のようにも見えますが…

ヒロコちゃんはもの静かで
とても怖がりな女の子
緊張するとカチンコチンに固まり
動けなくなることがあります

彼女の場合、同じ猫同士でも
固まっているのか
何だか、ややこしい状況に
なっていることもしばしば…

ゆっくりお昼寝をしようと
お気に入りの箱を確保しても
ノアにピッタリくっつかれて
押し出しを喰らったり

くーちゃんに追いかけられたフクちゃんが
ズボッと飛び込んできたり

「あっ、いつの間に…」
「お座布団半分、タマちゃんに取られてるし」

しっかりNoと言える子なら
怒って追い出したりもできるのでしょうが
固まっているのか
はたまた、気が弱いのか

何だか知らぬ間に
受け入れてしまうのがヒロコちゃん

相変わらず彼女のまわりには
試練がいっぱいです

最近、そんなヒロコちゃんが
ちょっぴり変わったこと、ふたつ

まずは、おやつの食べ方
あのアンニュイな表情を浮かべる
美しいヒロコちゃんからは
考えられないほど…

『ガフッ、ガフッガフッッ』
「ひえぇ…」
「痛いよ、指噛んでるし」

何かが憑依したかの如く
素早く激しく、せわしなく
がっつくようになりました



「よし、思い切り遊べ」
「日頃の鬱憤をぶつけるんだ」

そして、もうひとつは
おもちゃで遊ぶようになったこと

今までも、こっそり遊ぶことはあったのですが
視線を感じると途中で止めてしまったり
何だかバツが悪そうに
素知らぬ顔をして行ってしまったり

しかし、今では
大きなお目々を3倍ほどにしながら
一生懸命におもちゃを追います

最初は、お手々をちょいちょい出しながら
獲物を掴んだりするだけなのですが…

何度も繰り返しているうちに
普段は眠っている
激しい部分がニョキニョキ
目覚めていくようです

「よし、ヒロコ、頑張れ」
「たまには憂さ晴らしも必要だ」

煽っている秘書たちに
何となく感化されてしまうヒロコちゃん

『ガフッ、ガフッガフッッ』

捕まえた獲物を
グイグイ引っ張って
激しく囓り出すヒロコちゃん

「…よ、よし」
「…い、いいぞ」

そこにいたのは
いつものアンニュイなヒロコちゃんではなく
一心不乱に獲物を追いかける
強くて凛々しいヒロコちゃん

「なかなか新鮮なヒロコだ」
「うん、面白い」

しかし、この姿に変わるのは
棚の上で遊ぶ時限定

いったん床に降りてしまうと
より激しいハンターたちが
わらわらと待ち構えているため…

いつもの彼女に戻ります

ヒロコちゃんと出会って
二年過ぎましたが…

まだまだ彼女には
新しい発見がありそうです

「奥が深いね、猫は…」
「人間が浅いのかもよ…」

「中之島公園猫対策協議会ＨＰ」 web@nakanoshima-cats.com
「中之島公園の猫たち」 nekomat@nifmail.jp