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テーマ:「ありがとう」(53)
カテゴリ:追悼
静かな夜 なんとなく気配を感じて ふと目をやると ネット越しに並ぶ 二つの顔 少しの隙間を 奪い合うようにしながら じっとこちらを眺めているのは… アーモンドみたいなラインの 少し上がった猫らしい目と くるくると丸みを帯びた どんぐりみたいな目 「なに」 「どしたの」 声をかければ ネットに顔を何度もすり付け 小さな鳴き声を上げるちびた そして、丸い目を より丸くさせて 顔を見上げてくるロマン 「まだ寝ないの」 「何か用事があるの」 まるで、こちらが ちゃんと見ているかどうかを 確認するような二匹 しばらくすると 突然、少し離れたところまで走っていき ころころ転げ合って… 取っ組み合って 何度も馬跳びをして ころんと横になったまま やはり、こちらを向いている二匹 いつの間にか、ちびたとロマンは こんな風に、私と第二秘書を確認してから じゃれ合うようになりました 前は、ご飯前だけだったのに 一日のうち、何度も何度も 転がるようになったのは… 例えば、『元気だして』とか 『大丈夫だよ』とか『笑って』とか 私には、彼らが いろんなことを伝えたいと思っているように 感じられるのです 特別室の扉に貼られた写真は 二年前から変わっていないけれど… 今は二匹しかいない空間が 少し広く見えてしまって まだ寂しくなる夜もあります そんな私たちの心の動きを感じ 彼らは、彼らなりに 気を使っているのかもしれません 気の済むまで転がって 先に棚に帰っていくロマンを見ながら いつも、ちびたは 私たちの側に戻ってきます 「ちびた、ありがとね…」 「大丈夫だよ…」 声をかけると、彼女は いつも、真っ直ぐに視線を向けます そして、目を反らさずに 話しかける言葉に 耳を立てたり、目を細めたり まばたきをしたり まるで、一言一言に ちゃんと返事しているみたいに… 「今日ね、モデルを剣先に帰してきたよ…」 「雨だったけど、ふさこ待っててくれたかな」 いつも、私たちが呼ぶ声で 彼女が聞いていた名前 ずっと可愛がっていた弟と 世の中でいちばん好きだった 優しいお姉ちゃんの名前に 少し、ピクンと揺れた耳 何度も耳を揺らし まばたきをしながら 話を聞いているちびた 猫は、すぐに忘れるからと 昔、言われたことがあるけれど… きっと、彼女は忘れない 公園にいた頃から 離れたことがなかった彼らのことを… あんなに大切だと思っていた彼らのことを… 彼女は、ずっと忘れないでしょう 6月15日、先週金曜日は モデルの四十九日でした 時間が経つのは、本当に早いものです モデルの遺骨は分骨し 半分は、先に逝った仲間たちが眠る 合同墓へ入れました そして、もう半分は 翌日、6月16日の土曜日 剣先へ散骨しました 強い雨だったにも関わらず たくさんのお当番さんたちが モデルを見送ってくれました 剣先は、私と第二秘書が モデルに初めて会った場所です とても甘えん坊で いつも剣先へ行くたびに どこにいても走ってきたモデル そばには、いつも ふさことちびたがいました 二年前、モデルとちびた 彼らの新しい仲間になったロマンを置いて 先に逝ってしまったふさこ 彼女を剣先に帰した時 私たちは決めていました もし、これから先 「猫の部屋」にいる間に モデルとちびたに何かあれば ふさこの側に帰してやりたい、と… 私と第二秘書のわがままに 付き合ってくれたお当番さんたち Twitterで散骨することを知って 雨が上がるように祈ってくださった皆さん そして、ブログを読んで ずっと応援してくださっていた皆さん 本当にありがとうございました 心から感謝しています 「中之島公園猫対策協議会HP」 web@nakanoshima-cats.com 「中之島公園の猫たち」 nakanoshima_cats@yahoo.co.jp もし、お近くに来られることがあれば お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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