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テーマ:「ありがとう」(53)
カテゴリ:追悼
私は、今までに 何匹もの猫たちの 最後の日記を書いてきました ただ、言葉を持たない彼らが 何を求め、望んでいたのか 本当のところ、私にはわかりません 出会った日の彼ら 共に過ごす時間の中で変わっていく彼ら いつも近くで、その姿を見てきました その中で、たったひとつ わかることがあるとしたら… たぶん、彼らが何年も 自分の本当の姿を出すことができずに 生きてきたことでしょうか 今、私のそばにいる猫たちは 出会った頃、まったく違う表情をしていました もちろん、ゆうちゃんも そんな中の1匹です 人に心を開こうとせず ただ怖がり、警戒していた子 牙をむいて噛みつき 爪を振り立ててくる子 小さな体で必死に抵抗する彼らに いつも心が痛みました 人に馴れ、甘えてくる姿を求める人たちが その姿だけを見たとしたら 「やっぱり野良猫だから…」と言うかもしれません ただ、それは猫たちが 自分の身を守るために作りあげた姿です 彼らは、好き好んで そうしてきたわけじゃない 激しく威嚇することも 逃げ回ることも 生き抜くために必要だったから… 私のそばにいる猫たちは 共に過ごす時間で覆っていた見えないトゲを 少しずつ消していきました どんどん変わっていく彼らが 私に教えてくれたことは多いです だからこそ、彼らのすべてを ここに残しておきたい つたない言葉を紡ぐことしかできないけれど いつも、そう思っています バラ園で暮らすゆうちゃんたちに対して Sさんが貫いてきた姿勢は 野良猫として生きる彼らには必要なものでした けれど、Sさんの 本当の気持ちはどうだったのか… 何よりも彼らのことを考え ずっと見守り続けていた人が 思わないはずはありません どれだけ彼らを抱きしめたかったか 思い切り、甘えさせたかったか… 胸が苦しくなります そして、尻尾を立てて いつもSさんの後ろを歩いていた ゆうちゃんがどう思っていたか… 彼女の本当の姿を知ってから 余計に切なくなりました だから、私は「猫の部屋」で ゆうちゃんを撫でるSさんの姿が好きでした 笑顔のSさんと足元に座るゆうちゃんの姿が たまらなく嬉しかったのです 「猫の部屋」で暮らし始めた頃 ゆうちゃんは、かなり戸惑ったと思います 何もかも違う環境に Sさん以外は、初めて会う人間ばかり もちろん、私と第二秘書も どう接していいのかわからない 人間だったはずです 長年、人と距離を置いてきた彼女が すべてを受け入れるまでには 時間がかかりました 最初は、ケージの中に ご飯を入れるだけで、威嚇して 誰彼なしに爪を突き立てていました 私と第二秘書も 血だらけになったことは数知れません ただ、そうやって彼女が 見極めようとしているのはわかりました この人間は、信頼して大丈夫なのか ここは、安心できる場所なのか そんなことを繰り返しながら 数ヶ月経った頃 ある日、突然 ケージの中を掃除する私の手に ゆうちゃんは頬を押し付けてきたのです そして、そのまま 右の頬、左の頬とすり付けて来て… 最初は、とても驚きました けれど、そっと指先で触れると 彼女は、気持ち良さそうに目を細めました 少し硬い毛並みと温かい体を確かめながら 包み込むように撫でていると… 手のひらに響いてきたのは 小さく喉を鳴らす音 きっと何かが通じたんだと思いました それが、とても嬉しかったです けれど、すぐその後に ゆうちゃんは、小さくシャーと威嚇して 私の手に叩き、箱の中に戻っていきました やっぱり、最後には 絆創膏が必要だったけれど… あの小さなシャーは 照れ隠しだったのかもしれないと 可笑しくなったあの日 あれがいちばん最初に ゆうちゃんに触れた日でした あの日以降、彼女は 私を叩くことがなくなりました ケージから出て 部屋の中で過ごすようになってからは 何度も驚かされました あの頃、もう10才近かったはずなのに 若い猫には負けないほどの健脚 葦簀で作られた壁を まるで平面を走るかのように登り 内屋根にしていた波板の上を 軽々と歩くゆうちゃん 葦簀を降りるのが苦手な猫が多い中 彼女だけは、音も立てず こともなげに降りていました その姿は、普段の大人しい彼女から 想像できないほどでした とても力強く、格好良かったゆうちゃん 足腰と同じくらい強かったのが歯 少し硬いおやつでも いつも、ゆうちゃんは ばりばりと噛み砕いていました ただ、公園にいた頃は もちろん、手から直接食べたことなどない彼女 おやつを持つ指ごと 思い切り噛みついてしまったり 爪で指をひっかけて 口元に引き寄せようとしたり ひどい時には、私も第二秘書も すべての指に、絆創膏を巻くはめになり 大笑いしたことがありました けれど、なぜ私たちが そんなに笑っているのかわからないから ゆうちゃんは、きょとんとした顔で… もっと、おやつをもらおうと 足元に何度も頬を押し付けては 甘えていました 人と距離をとりながら もう何年も厳しい暮らしをしてきた おばあちゃん猫なのに… 子猫のように素直で とても甘えん坊だったゆうちゃん それが、やっと見ることのできた 彼女の本当の姿でした 「中之島公園猫対策協議会HP」 web@nakanoshima-cats.com 「中之島公園の猫たち」 nakanoshima_cats@yahoo.co.jp なかなか日記を更新することができず ご心配をおかけしています。 皆さん、申し訳ありません 書きたいことは、たくさんあるのに なかなか上手く言葉することができませんが… もう少しゆうちゃんのお話に お付き合いいただけると嬉しいです。 猫ボランティア・保護活動ランキングへ 人気ブログランキングへ いつもたくさんの応援をありがとうございます お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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