|
テーマ:「ありがとう」(53)
カテゴリ:追悼
ゆうちゃんを「猫の部屋」に連れて帰ろう いちばん安心できる場所へ… 家族である仲間たちのそばへ… 危篤状態の彼女にとって それが、どれほど危険を伴う行為かは 覚悟していました それでも、病院へ到着した時 正直、心は揺らぎました 2日ぶりに会った彼女 大きな酸素マスクを付けて 口を開けたままの苦しそうな呼吸 近寄った私に向ける瞳には もう、いつもの力強い光はなく 涙がいっぱいたまっていて… ゆうちゃんのそばには 昼から付き添っていた水曜日のお当番Kさんと 手を尽くしてくださった先生 酸素マスクを付けた時 ゆうちゃんは、少し落ち着いたそうです けれど、時間が経つごとに 何度も呼吸が乱れるようになり その都度、先生が処置を施してくださったのだと Kさんが教えてくれました ゆうちゃんのそばに座って 彼女の背中を撫でました いつもより、少し低い体温 ちょっと硬い毛並み、柔らかな皮膚 体を大きく上下させている鼓動 こんなに頑張っているのに… まだ、一生懸命 生きようとしているのに… もう本当にダメなんだ… どんなに撫でても もう彼女が甘えてくれることも 手のひらに顔を埋めて 喉を鳴らすこともないんだ… そう思うと涙が止まりませんでした 先生は、今の状態を説明してくださり どうしたいかと聞かれました 私は、先生に 最後の質問をしました --- このまま病院に置いておけば あと、どれくらい生きられますか --- 先生は、少し考えて 明日の朝まで持つかどうかだと言われました 彼女に残された時間は 朝が来るまでの10時間足らず けれど、もし今 この状態で動かせば すぐに呼吸が止まる可能性もある もしかしたら「猫の部屋」へ帰る車の中で 逝ってしまうかもしれない 苦しそうな彼女の姿に また一瞬、心は揺らいだけれど… --- たとえ、5分だけになっても… ゆうちゃんの安心できる場所で逝かせたいです --- 私はそう答えました やっぱり、気持ちは変わりませんでした どちらの結末になっても また、新たな痛みが増えることは わかっていました 私が選んだことは 確実に彼女の時間を削ってしまうのだから ただ、それでも私は 彼女を「猫の部屋」に連れて帰りたかった… どうしても、一緒に帰りたかったのです 泣きながら話す私に 先生は頷いて、こう言われました --- 自分の猫が同じ状況なら 私も連れて帰ると思います 気持ちわかりますから… --- あの時の先生の言葉を思い出すと 今も私は、少しだけ 救われるような気がします 移動中、ゆうちゃんが苦しくないようにと Kさんは、携帯用の酸素ボンベを 用意してくれました 先生は、いくつもの薬と注射器を用意しながら もう診察も終わっているから 自分も同行すると言ってくださいました 無事に「猫の部屋」へ着けるか 本当は、とても心細かったから その言葉に、また涙がこぼれました 先生の指示に従って 部屋から持って行った猫ベッドに ゆうちゃんを寝かせ ベッドごと抱きかかえてKさんの車へ 後部座席の真ん中 先生と私に挟まれたゆうちゃんは ベッドの中で横たわりながらも 少しだけ首をもたげて驚いた顔をしました ゆうちゃん、帰ろうね… 私は、彼女を撫でながら そう何度も声をかけました けれど、帰り道を急ぐ車の中で 少しずつ呼吸は乱れて 首を起こすこともできなくなって… 手早く状態を診ながら 頭や顔の位置を変えたり 注射を打ってくださる先生 私は、彼女の口元に酸素を送りながら ずっと声をかけ続けました もう到着するという時に ゆうちゃんは大きく目を開いて 痙攣を起こしました 先生は、すぐに注射を打って もっと大きな声で呼びかけてくださいと言われました どうか、もう少しだけ ゆうちゃんに時間をください… そう祈りながら 何度も彼女の名前を呼びました 入り口で帰りを待っていてくれたのは… 第二秘書とお当番さんたち そして「猫の部屋」を作ってくれた 元公園事務所の職員さん 車から降ろした時 少し呼吸は弱くなっていたけれど ゆうちゃんの瞳には、ちゃんと 自分を待っていた人たちが映ったはず 少し動いた耳先に みんながおかえりと言ってくれた声が ちゃんと届いたはずです 住み慣れた部屋の真ん中に ベッドを運びこむと すぐに、くーちゃんたちが挨拶に来ました 自分を囲んでいるのは ずっと一緒に暮らしてきた仲間たちと 可愛がってくれた大好きな人たち あの時、あの光景を 彼女は、どう思っていたでしょうか… 何度も、何度も 自分の名前を呼ぶ声 注射を打ち、胸を押す先生の手 そして、それに反応するように 彼女は大きく息をして… 車を止めに行っていたKさんが 部屋に帰ってきた直後 全員揃ったことを確かめたかのように ゆうちゃんの呼吸は止まりました 聴診器で心音を確認してくださった先生が 手を止められたのは… 「猫の部屋」に帰ってきてから 10分が過ぎた頃でした ベッドの中に横たわる彼女は まるで眠っているように見えました 実は、あの日 ゆうちゃんを看取った後の記憶が あまりありません ただ、彼女が最後の時間を 「猫の部屋」で過ごせたことに安堵しながらも とても胸が苦しかったことは 覚えています 大切な子を看取り、送る そして、彼らが生きていた証を残す 今まで、どれだけ繰り返してきても 毎回、感じる痛みには 「慣れない」と書きました けれど、本当は その痛みに慣れてはいけない… すべての痛みを受けとめて 進むべきなのでしょう どんな時でも 一生懸命生きる彼らに関わることは とても重いことだから… これからも同じように 立ち止まってしまう日はあると思います それでも、私は 真っ直ぐな彼らを見続けていられるなら とても幸せです ゆうちゃん、本当にありがとう… 「中之島公園猫対策協議会HP」 web@nakanoshima-cats.com 「中之島公園の猫たち」 nakanoshima_cats@yahoo.co.jp 最後に… ブログを読んでいただき たくさんの励ましをくださった皆さん 皆さんいただいた温かい応援で どれだけ支えられたかわかりません。 本当にありがとうございました。 そして… 「ゆうちゃんを連れてかえりたい」という 私の願いを叶えようとしてくださったN先生 先生のお陰で、ゆうちゃんは「猫の部屋」で 最後の時間を過ごすことが出来ました。 本当にありがとうございました。 猫ボランティア・保護活動ランキングへ 人気ブログランキングへ ゆうちゃんを愛してくださったすべての皆さんに、心からの感謝を込めて… お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[追悼] カテゴリの最新記事
|