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テーマ:ありがとう(609)
カテゴリ:追悼
「命を刻む ハナのこと・3」はこちら
「命を刻む ハナのこと・2」はこちら 「命を刻む ハナのこと・1」はこちら 皆さんもご存じの通り 現在の「猫の部屋」は三代目です ここは、ちゃんとした屋根と壁があって 水道も電気も完備され 快適に過ごせる場所 工夫された部屋には きれいに洗濯した毛布や 暖かなベッドがたくさんあります 猫たちは、それぞれ 好きな場所で寛ぎながら 好きなように過ごしています ここには、特別なこともない 代わり映えのしない時間の流れがあります その中にいる猫たちも 毎日、同じことを繰り返すだけ でも、それは とても自然で、穏やかで… どの角度から眺めても いつも、そんな彼らの姿が見られる 変わらない風景 けれど、今は 当たり前になった風景が 本当は、とても特別なものだと 私は知っています 平凡に見えるけれど 決して簡単に手に入るものではなかったから… まだ、何も見えず 手探りで進んでいたあの頃 どんなことをしても どんなに時間がかかっても 心から欲しいと望んでいたのが この風景でした それを手にするまでに 私たち人間が乗り越えたものは とても多かったと思います けれど、猫たちが 乗り越えたものの多さは きっと、人間である自分とは 比べものにならないはず… 出会った頃 彼らは屈強な鎧をまとって すべてを拒絶していました それは、私たちにとって 胸が痛むほどの姿でした でも、その鎧はすべて 野良猫として生きてきた彼らを 守ってくれたもの きっと、身につけていなければ 厳しい世界を生きてこられなかったものだから… 結果として、彼らは 私たちと共に歩くことを 受け入れてくれました そこへたどり着くまでに どれだけの葛藤があったのか… 私には計り知れません だからこそ、今 そばにある風景を見て思うのです これは、多くのものを乗り越えた猫たちが 私たちにくれた特別のもの とても尊いものだ、と… バラ園が閉鎖された後 「猫の部屋」は多くの猫たちで 一気に溢れかえりました 剣先の猫しか知らなかった私が 初めて会う猫たちです 初対面の猫と人間が何を感じたか… おそらく、猫たちは 突然、現れた私たちのことを 害をもたらす存在だと思ったでしょう そして、私たちは 初めて会った彼らが どんな性格で何を求めているのか 何もわからなかった… 主導権をとるべきは私たち人間でした ただ、ひとつでも間違えれば 彼らは、もっと心を閉ざしてしまう ちゃんと歩み寄れるだろうか… 胃が痛むほどの プレッシャーを感じました けれど、猫たちの協力がなければ スタートラインにすら立てなかったから… 道はひとつしかなかったのです とにかく、怒りでも 憎しみでもいいから 私たちにぶつけてくれればいい どんなに些細なことでも 彼らの示すサインなら すべて受けとめる覚悟はあるから… もっと、もっと 彼らのことが知りたい 彼らの声が聞きたい… 初めて会った猫たちを見ながら 私は、そう思ったのです 「猫の部屋」にやって来た当初 ハナは、小さなケージの中で 気配を消していました 何度、前を通りかかっても ぐちゃぐちゃに丸まった毛布しか 見えないケージ ご飯のお皿を入れても 人間が部屋の中にいる時には 決して、姿を現すことはなく… 翌朝、空っぽになったお皿を見て ちゃんと食べたのだと確認する日々は しばらく続きました そんな時期が過ぎて ケージの中に気配を感じたり ちらちらと顔や姿が見えるようになった時 彼女は、ものすごい剣幕で 怒りを表すようになりました 目が合っただけで ケージを壊そうとするかのように ガンガンぶつかっていた時の顔 扉を開けて、ご飯を入れようとする手に 容赦なく爪を振り下ろし お皿ごと叩き飛ばした時の顔 小さな体全部を使って ハナは、とてつもなく強い殺気を 向けていました あの頃は、ハナだけでなく 多くの猫たちが同じ様子でした 威嚇を繰り返しながら 引っ掻いて、噛みついて… たぶん、今の彼らからは 想像することができないでしょう 変化していく彼らを いちばん近くで見てきた私たちでさえ 昔と今を比べると 同じ猫だと思えないのですから… 当時を知る、いちばん古いお当番のIさんや 二番目に古いお当番のsinsinさんは いつもこう言います --- とにかく怖かったとしか言いようがない --- --- ハナちゃんのケージの掃除なんてできる状態じゃなかった --- おそらく、Iさんやsinsinさんには 常に手や腕は傷だらけで 暴れる猫たちを押さえ込んでいた 司令塔Aさんや運び屋Tさん、Sさんや私たちも 怖かっただろうと思うのですが… 確かに、ハナの荒れ方は 群を抜いて激しかったと思います 両手で地団駄を踏みながら 鋭い牙で、私の手に噛みつこうとする顔は 彼女の本気の怒りを むき出しにしたものでした もちろん、それは心身共に 痛みを伴うものだったけれど… 同時に私は嬉しくもあったのです それは、気配を消していた彼女が 初めて真正面からぶつけてきた 感情だったから もしも、何かを伝えたいなら 全部ちゃんと受け取るから もしも、私の声を聞いてくれるのなら いつでも気持ちを伝えるから… 何度もそう思いました すべてを拒絶したままなら 糸口はつかめなかったでしょう けれど、たったひとつの感情でも 向けてくれるのなら そこから何かがつかめるかもしれない… たぶん、猫だとか 人間だとかは関係ありません ただ、私には 彼らの存在がとても大切だったから そばにいたかったから… とても贅沢な願いだけど 私は、彼らからの「信頼」が 欲しいと思いました だから、彼らに嘘はつかない いい加減な誤魔化しもしない 信頼は、ひとつひとつの信用を 積み重ねてしか生まれないのだから… それは、今もなお 心にとどめている誓いです 「中之島公園猫対策協議会HP」 web@nakanoshima-cats.com 「中之島公園の猫たち」 nakanoshima_cats@yahoo.co.jp 猫ボランティア・保護活動ランキングへ 人気ブログランキングへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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