|
テーマ:ありがとう(609)
カテゴリ:追悼
「命を刻む ハナのこと」1~5はこちらから
以前、ある方が こんなことを言っておられました --- 秘書さんたちや司令塔Aさんは 特別だと思っていました --- 猫を手離す時 自分は、感情移入しすぎるから 冷静に送り出すことなどできるのかが 不安なのだと… たぶん、その方には 何匹もの猫と別れを繰り返してきた私たちが 強い人間に見えたのでしょう けれど、私たちも同じ人間です 特別なところなんてない 幸せな別れでも、悲しい別れでも 手離す時は寂しいです ただ、それでも… この手で未来へ送り出したい この目で最期を見届けたい そう思っているだけです 大袈裟だと言われるかもしれませんが… 私にとって 「中之島公園の猫たち」との出会いは 生活を一変させる出来事でした 目の前の居場所をなくした彼らに なにができるのか わからなかったけれど… なにもできないとも思わなかった あの頃… 自分の中に、こんな熱い部分があることを 教えてくれたのは彼らです それが、とても大切なものであることを 教えてくれたのも… だから、どんな一瞬でも 私は、彼らを見つめていたいのです たとえ、それが 命の消える瞬間だとしても… --- また土曜日だね… --- 2014年9月27日土曜日 ハナの異変を知らせた電話で Aさんは、そう言いました 毎週土曜日は 私と第二秘書がお当番の日 京都に住む、私たちは 平日は、ほとんど「猫の部屋」に 行くことができません けれど、土曜日だけは 朝から夜遅くまで猫たちと過ごします 7年間、ずっと変わらない私たちの生活 --- 私は、今日を選ぶと思う… --- 「猫の部屋」に暮らす彼らは なぜか土曜日に逝くことが多いから… Aさんの言葉が耳に残りました 闘病生活に入ってからも ずっと、ハナは部屋中を自由に 歩き回っていたけれど… どんどん、体が弱りはじめて これ以上は危険だと思うようになってから 泣く泣く、ケージに入れました けれど、工夫されたケージの中で 彼女は上へあがったり、下へ降りたりしながら 落ち着いていました いつも、その表情に救われていたのです --- ケージの中にいても快適に過ごせるようにしたいから --- 前日の金曜日 お当番さんたちは ハナの生活空間を広げようと ふたつのケージをひとつに繋げてくれました 優しい気持ちから出来上がったケージは とても大きく、楽しそうで… けれど… あの朝、私と第二秘書が そのケージをのぞき込んだ時 ハナは、広くなった床の片隅で 横たわっていました 上下にゆっくりと 脇腹を動かす呼吸は 苦しそうではなかったけれど… どこか、弱々しくて 静か過ぎるように感じました 貧血が進行していたので 寝起きは、いつも動きが遅く ぼんやりすることも多くなっていました それでも、普段ならすぐに起き上がり ちょこんと座って ご飯を待つ体勢になるのに… 虚ろな表情のまま なかなか動こうとしない彼女の名前を 何度も呼びました しばらくして、上体を起こし こちらを向いたハナ その姿に、少し安心して ケージの扉を開けてみたけれど… 立ち上がった彼女の脚は もう体を支えられないほど ふらふらしていました それでも、なんとか外へ出て 歩き出そうとしたとたん よろめいて倒れそうになって… とっさに抱きとめた時 手のひらに感じたのは、冷たさ 過去にも何度か触れたことがある 怖くなるほどの体温でした もう私には、注射を打つことも 薬を塗ることさえもできないんだ… なにもできることはない ハナが、そう言ってる… 覚悟していたけれど それを認めなければならない瞬間は いつも同じ気持ちになります 悲しくて、寂しくて 無力な自分が悔しくて… やりきれない思いがこみ上げました 日向ぼっこが大好きだったハナ 彼女と過ごした最後の日は いい天気でした 窓から差し込む日差しで 部屋の中は明るくて… 何度か起き上がろうとして そのたびに倒れ込んだハナは もう立とうとしませんでした だから、お日様の当たる場所に置いた ベッドに寝かせました 彼女のネーム入り座布団に 洗い立てのフリースを敷いて ちゃんと枕も置いて… お日さまを浴びたハナは まぶしそうに目を細めていました 私と第二秘書は 彼女を囲むように座って 小さくなった体を撫でました 見た目よりも 柔らかい手触りだった毛並み 免疫が下がってから 喉元と胸にかけて脱毛が広がって 傷ができていたけど… 薬を塗り続けたからか 傷は、すっかりと消えて 新しい毛が生えそろっていました その感触を確認するように 喉元を撫でていると… 彼女は気持ち良さそうに 首を伸ばして、指先に顎を乗せました 最期の瞬間が近づく時にも こんなふうに、自分のすべてを 手のひらにあずけてくれることが 本当に嬉しかった… ここにいるのは もう、人を拒絶することもなく 自然に、自分らしく 素顔で生きているハナだと思いました 何年も願い続けた 彼女のそばにいたいという私の思いを 受けとめてくれたかもしれない… 初めて、そう感じました ずっと可愛がってくれた バラ園のお母さんSさん いつも病院への送迎をしてくれた カニバケツさん まだ荒れていた頃のハナを知る sinsinさん… あの日、彼女に会いに来た人たちも たぶん、初めてゆっくり 彼女を撫でたはずです そして、ハナもまた いくつもの優しい手の温もりを 初めて、体で受けとめていました どれだけ拒絶しようとも 長い間、諦めずに見守り続け 愛してくれた人たちへ… あの時、彼女は なにを伝えたのでしょう 夜遅く、翌日のお当番 Iさんが来てくれました Iさんは、いちばん古いお当番さん sinsinさんと同じく ハナには苦労した人です 涙ぐむ優しいIさんと 懐かしい話をしながら ウトウトするハナを見ていました その時も苦しそうな様子はなく 呼吸は、ゆっくりしていて… 帰っていくIさんを見送りながら もう少し、こんな時間が 過ごせるかもしれないと思いました けれど… まるで決まっていたかのように 京都へ帰る最終電車の時間が近づいた頃 ずっと静かだったハナが 咳き込むような呼吸をしました 何度も名前を呼んでいると… 深呼吸するように 深く大きく、息を吐いて また、少し咳き込んで… 突然、体を弓なりにしたハナ その瞬間、彼女が喉を撫でていた私の手を ぎゅっと握りしめたのがわかりました そして… そのまま、逝ってしまったのです あの時… 右手の人さし指に感じたのは 久しぶりに爪が刺さる痛みでした あんなに小さな手だったのに 精一杯込められた力は、とても強くて… 今はもう、傷跡は 消えてしまったけれど… 彼女の最期を この手で受けとめられたこと 幸せだと思っています http://youtu.be/aXavvyaOtsQ ハナ、一緒にいてくれてありがとう… 猫ボランティア・保護活動ランキングへ 人気ブログランキングへ 皆さん、ありがとうございました お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[追悼] カテゴリの最新記事
|