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テーマ:猫が教えてくれたこと(53)
カテゴリ:思い出
「ここにいること~ノアのこと・1~」はこちら
2008年12月、とても寒い夜に 私はノアと出会いました なぜ彼がそんなことをしたのかは わからないけれど... あの夜、初めて会った私に ノアがしてくれたことがあります ほんの一瞬だったけれど とても驚いた出来事 昨年末に亡くなるまでの6年間 同じ時間を過ごしながら ずっとノアを見てきました 彼が本当の姿を見せてくれるようになってから 何度か考えたことがあります もしかしたら あの夜の「挨拶」には 何か意味があったのかもしれない... 伝えたいことがあったのかもしれない... もちろん、それは 私の勝手な想像なのですが... そんなことを考えていると 本当は甘えん坊だった彼を思い出して たまらない気持ちになるのです 「猫の部屋」が誕生した当時 毎日、山積みになるほどの捕獲器で 猫たちが運ばれてきました 威嚇して大暴れする猫たちを 毎日、手術に運んでは 次々とケージ代わりの犬舎に入れていく日々 用意した犬舎は、まったく足りず 協力して下さっていた愛護団体さんにお願いして 大量のケージを用意していただきました それでも猫たちの入った捕獲器は 毎日、どんどん運び込まれて... まるで、それは 永遠に続くかのようでした 公園内で暮らしていた すべての猫たちの捕獲が終わったのは 桜が咲き始める頃 その直後、初代の「猫の部屋」から 二代目「猫の部屋」への引っ越しもありました 結局、私たちが 犬舎とケージの扉を開け放つことができたのは 厳しい暑さを感じるようになった頃 「猫の部屋」誕生から すでに半年以上が経っていました --- やっと、これで猫たちと ゆっくり向き合う時間ができる --- 秋が過ぎ、冬を迎えて まだ、多くの猫たちは人には馴れず 「猫の部屋」自体にも 難しい問題がたくさん残されていたけれど... ほんの少しだけ 静かな時間が持てるようになった頃 ノアたちはやって来たのです 二代目の「猫の部屋」にも まだ、電気はありませんでした 日が沈むと、足下も見えなくなるため 支援物資でいただいたランタンを点して 灯りに集まってくるようになった猫たちと ゆっくり過ごすのが楽しみでした あの夜もランタンの灯りだけが 部屋を照らしていました 今よりもかなり多い数の猫たちがいたのに... 彼らは全員、鳴き声ひとつ上げずに 数台の捕獲器を見つめていました 一台一台、捕獲器をのぞくと 見られていることを警戒しているのか 中からは、荒い呼吸に威嚇する声 そして、激しく暴れる音... けれど、1台だけ とても静かな捕獲器がありました ランタンの灯りでは 中にいる猫がよく見えなくて 私は、捕獲器の横にしゃがみ込み 中をのぞいたのです そこにいたのは 金色の目を限界まで見開いて うずくまっている黒猫 近寄って、初めて その真っ黒な額や口元が 赤く濡れているのが見えました それは血でした 暴れている他の毛色の子たちが 血だらけだったことは すぐにわかったけれど... 薄明かりの中でも 血を流している黒猫の顔がはっきりと見えた時 あまりの痛々しさに 涙が出そうになりました その子は、目を大きく見開いて 私の顔を見ていました 暴れることも威嚇することもなく 息をひそめて、身じろぎひとつせず あまりにも硬直しているのが気になって しばらく、横に座り込んで その子に声かけました --- だいじょうぶだから... --- 金色の目を見つめながら 何度も何度も、そう繰り返して 赤く濡れた鼻の前に ゆっくりと指を近づけた時 その子は、まるで匂いをかぐ時のように 私の指先に顔を寄せて その鼻を押しつけたのです 黒猫も他の子たちも 人に接したことがない猫 まったく人馴れしていない猫たちでした とても警戒心が強く 人間を恐れているのがわかりました だから、ほんの一瞬でも 初めて会った人間の指に顔を寄せて 挨拶のような仕草をする黒猫に驚いたのです それが不思議な黒猫 ノアとの出会いでした 元々、ノアと仲間の猫たちがいたのは 閉鎖エリアの公園のそばでした そこは、川沿いに続いている 河岸壁の細長い隙間 上の通りから、何とか降りても 人間が歩けるほどの幅もなく とても狭い場所 11匹の猫たちは そこで暮らしていました ただ、そこでの暮らしには 多くの危険があったと思います いつも、足場にできる壁を器用に飛びながら 通りにかかる橋の上まで来ていた彼ら けれど、もし一歩でも 足を滑らせていたら 真っ逆さまに川へ落ちていたはずです また、心ない人間が傘を振り回して 彼らを追いかけることもあったようです それでも、あの隙間は 彼らにとって大切な居場所だったはず それを捨てて、危険を冒してまでも 命がけで逃げるしかなかった彼ら まだ、工事の始まっていない 閉鎖エリアの公園は 静かで安全な場所に見えたのでしょう 私たちは、そんな彼らを捕まえて 「猫の部屋」に連れてきました あの夜、彼らが感じていた絶望と恐怖が どれだけ大きかったか... きっと、私たちには 計り知れないだろうと思いました 11匹の猫たちを入れる犬舎とケージの中に 毛布を何重にも敷いた箱と 小さなトイレを置いて 取り外してあった頑丈な扉を 再び、取り付けた時... 初代の「猫の部屋」で 捕獲に追われていた頃のことを 思い出していました また始まろうとしている新たな時間に 不安な気持ちがなかったとはいえません ただ、それでも... 彼らが抱えている感情を すべて、ぶつけてほしいと思いました 公園で暮らしていた猫たちが 狭い犬舎やケージの中で 今の彼らと同じ表情をしていた時に 感じていたのと同じ気持ち --- そのまま全部受けとめるから... --- きっと、また時間はかかる けれど、少しずつ積み重ねていけばいい ここにいることを彼らが 早く受け入れてくれるように いつか人間を信頼してくれるように... そして、いつか... あの不思議な黒猫とも もっと触れあうことができますように、と... 「中之島公園猫対策協議会HP」 web@nakanoshima-cats.com 「中之島公園の猫たち」 nakanoshima_cats@yahoo.co.jp もう少しノアの話は続きます どうか、ゆっくりとお付き合いいただければ嬉しいです 猫ボランティア・保護活動ランキングへ 人気ブログランキングへ ブログランキング参加中 いつもたくさんの応援ありがとうございます お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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