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テーマ:「ありがとう」(53)
カテゴリ:追悼
昔、「猫の部屋」には 「飼い猫」だった猫たちがいました 彼らの「飼い主」だったのは 公園で暮らしていたホームレスさんたち 再整備工事で長期間閉鎖が決定した時 ホームレスさんたちは 立ち退きを決断されました その大半が社会復帰への きっかけになったそうです テントを畳んだホームレスさんたちは それぞれ、故郷に戻られることになったり 施設や病院に入られることになったのですが… ただ、ひとつ 皆さんの気がかりだったのが 一緒に暮らしていた動物たちを 連れていくのが難しい状況だったこと 一軒一軒、テントを回っていた 公園事務所のおじさんたちの元には 多くの相談が寄せられました もちろん、そのすべてが 動物たちの行く末を 心配するものばかりではありません 何も言わずに 置き去りにされた子たちもいました 劣悪な飼育状態で 公園事務所のおじさんたちが 緊急レスキューした子たちもいます けれど、中には… 自分の体調が悪いのに 大切な猫を置いていけないからと 入院を躊躇する方 生活が落ち着いたら 必ず、迎えに来るからと 誓約書を書いて預けていく方もおられたのです その当時「猫の部屋」では 公園事務所のおじさんたちから依頼を受け 「飼い猫」として暮らしていた猫を預かっていました 彼らは人が好きでした 人に甘える方法も 人から愛される喜びも ちゃんと知っていました 劣悪な飼育状態だった子や 置き去りにされてしまった子も 最初は、新しい環境に 少し戸惑っている様子だったけれど… 公園の野良猫だった私たちと比べて 人との距離感に違いがあったと思います 彼女もそんな「飼い猫」でした 何よりも好きだったのは人に甘えること 人から可愛がってもらうこと そして、苦手だったのは 同じ仲間である猫 少し怖がりだったけど 勝ち気だった彼女は 初めて会った仲間たちと上手く付き合えず よくケンカをふっかけていました 私たちもそうでしたが 大抵の「飼い猫」たちも 何匹もの仲間たちと暮らしていた子が 多かったです だから、みんな誰とでも すぐに仲良くなれる子ばかりでした けれど、彼女だけは なかなか猫同士の付き合いに慣れることができず かなり時間がかかりました あの頃の彼女の 知らない猫に対する戸惑いは おそらく暮らしてきた環境にあったのでしょう 彼女の「飼い主」だったホームレスさんには あまり良くない噂話がありました ブランド猫の血を引くという彼女に 何度も子猫を生ませては どこかに売っていた… そんな噂話です もちろん、誰かが現場を 見ていたわけではありません けれど、その話にまつわる情報は かなり信憑性の高いものだったようです だからなのか、その飼い主さんは 彼女と他の猫との接触をとても嫌っていました そして、他の人に彼女を会わせることも 拒否し続けていたそうです 公園事務所のおじさんたちも 何度もテントを訪ねて 彼女に会わせてほしいと言ったらしいのですが… 毎回、頑なに拒否され 追い返されていたそうです きっと、このままでは よくない状況になってしまう… そう考えた公園事務所のおじさんたちは 半ば、強引に彼女を「猫の部屋」に連れてきました それが秘書たちと彼女との出会いでした 小さくて可愛らしかった彼女 けれど、何度も出産経験のある 立派な大人の猫でした 表面的には まるで深窓の令嬢のように 守られていたけれど… 「猫の部屋」に来た時も 彼女は、妊娠していました それを知った秘書たちは とても心が痛んだそうです ただ、そんな彼女もまた 人に甘える方法を、人から愛される喜びを ちゃんと知っている子でした それを教えてくれたのは、 紛れもなく「飼い主」さんだったのでしょう もしかしたら、とても邪で 歪んだ愛情だったのかもしれない… けれど、それでも彼女は 人の手の優しさや 抱きしめられることの温かさを覚えて 生きてきたのだと思いました 愛情に見返りを求めた人間に ただ、無償の愛を返していた彼女 今でも、私は とても尊いと思います いつも誰かのそばにいたい 自分を愛してくれる人のそばにいたい… まだ、人と距離を詰めることに 警戒する仲間も多かった中 元「飼い猫」たちは そんな純粋で真っ直ぐな願いを 持っていました もちろん、彼女も同じでした いいえ、もしかしたら… そばにいる人たちには すぐに心をひらいた彼女だから 他の誰よりも願いは強かったかもしれません 「猫の部屋」に来て一年が経った頃 彼女が出会ったのは とても温かい人たちでした 優しいお父さんとお母さん 就職が決まったばかりのお姉さん まだ、学生だったお兄さん 怖がりだった子猫 ララを迎えてくださったYさんご家族 ララとのお見合いの際に会った 彼女の愛らしさが忘れられないと ご家族で話し合って迎えてくださったのです あれから7年 5月17日の夜、彼女が… ハルカが亡くなりました 第一秘書にお電話を下さったのは 7年前、ハルカに一目惚れしたY家のお姉さん ハルカは、この7年 大きな病気をすることもありませんでした ただ、この春先から 少しずつ、年齢的な身体の衰えは 目立つようになっていたそうです それでも、特に病気もなく 毎日、元気に過ごしていたハルカ --- 本当に、すごく急なことで… 二日前まで、ご飯も食べてたんです --- お姉さんは、電話で そう言っておられました 亡くなる前日、ぱたっと何も食べなくなって ほとんど動けなくなって… 病院の先生からは 老衰だと告げられたそうです それでも、何とか 持ち直してくれるようにと 祈っていて下さったのですが… 彼女は、天寿をまっとうしました --- ハルカ、苦しまずに逝きましたか… --- そう尋ねた第一秘書に お姉さんは、こう言われたそうです --- はい… 最期まで、ずっと見守っていました… --- それを聞いて 本当に良かったと思いました ハルカの過去を聞いて 可哀想だと思う人はいるでしょう 憤りを感じる人もいるかもしれません けれど、彼女は決して 可哀想なだけの猫ではありません ハルカには、見返りを求めない愛情で いつも優しく包んでくれる家族がいました 7年という月日は 短かったかもしれない けれど、最期を迎える瞬間まで 心から愛してくれる人たちのそばで 生きてこられたことを… きっと、彼女は幸せだと思っていたはずです ハルカ、良かったね… 「中之島公園猫対策協議会HP」 web@nakanoshima-cats.com 「中之島公園の猫たち」 nakanoshima_cats@yahoo.co.jp Y家の皆さま いつもお兄さんからいただくお手紙と写真を とても楽しみにしていました 今年のお正月のお手紙と 同封されていた写真… ララと新しく家族になった弟猫ちゃん そして、一緒に写っているハルカの優しい顔が 本当に嬉しかったです 甘えん坊で寂しがり屋のハルカを 家族に迎えて下さったこと… 穏やかで優しい時間を与えて下さったこと… 本当にありがとうございました 心から感謝しています 中之島タキシード 第一秘書&第二秘書 猫 ボランティア・保護活動ランキング 人気ブログランキングへ ハルカ、空には懐かしい仲間がたくさんいるよ… きっと今度は、すぐに仲良くなれるよね… お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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