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2006.03.12
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カテゴリ:節気の猫句
春 が 来 て 蜥 蜴 蛇 蜘 蛛 猫 み や げ

 日差しが明るく、日が長くなり、日一日と地面が暖まってくる時期、冬ごもりをしていた虫がその地面から這い出して来るのが「啓蟄」のころ。今年は3月6日であった。「啓」は「ひらく」という意味で、「蟄」は虫などが土中にひそみ、こもっていること。ものの本によれば、「陽気地中にうごき、ちぢまる虫、穴をひらき出ればなり」と説明されている。

 でも今年の冬は寒かったから、虫たちが活動し始めるのは、実際にはもう少し後のことになるかなと思っていたら、いやいや、それがそうでもなく。
 今週初めの5日のこと、私はフキノトウやノビルを採りに田の畦の斜面におりていた。背中に当る日差しは暖かく、ホトケノザやイヌノフグリなどの可憐な花が一面に咲き、農家の庭先の梅や沈丁花からはいい香りが漂い、そんな中で酒の肴の材料を手に入れられるなんて最高だな、と、心地よく若菜摘みを楽しんでいたら、背後から、かすかに「コロロ、コロロ」と聞こえる鳴き声、そして、目の前をひらひらと飛ぶ黄色い姿。私にとって今年初めて聞く蛙の声で、今年初めて見る蝶である。
 暦を知るはずのない生き物の活動と、二十四節季の説明がぴたりと合っているのは、古人の経験知の的確さを物語っているようで感服である。

 そんな季節、猫のいるご家庭では、ちょっと憂鬱を感じている方もおいでかもしれない。
 なぜなら、虫や生き物の活発が活動になると、それを狙う猫たちの狩猟活動も活発になるから。そしてその狩猟の成果を、彼らは飼い主に「お土産」として持ち帰るからだ。
 当家の飼い猫の「ち」も結構なハンターで、様々なお土産を持ってきた。
 今回の句は虫偏の漢字ばかり続いてわかりにくいが、音にすれば「とかげ、へび、くも」で、「ち」が実際にお土産として持ち帰らなかったのは「へび」だけである。

 そういえばこれも、ものの本で読んだのだが、「ねこ」というのは「ねずみ」を捕るからという俗説から、「へび」を捕るのは「へこ」、「とかげ」をとるのは「とこ」という俗称もあったそうな。その伝で言えば「ち」は、とかげが大好きだったから、「お前はまたとかげ捕ってきて。本当に“とこ”だねえ」というふうに使うのだろうか。

keichitsu

 啓蟄には、ベランダの鉢の土からも冬ごもりの虫が出てくるのだろうか。ともあれ、そこに乗った「ち」は自分の体で鉢の地面がいっぱいいっぱいで、その下の虫を捕るなどという動作は、非常にしにくそうだったけれども。





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Last updated  2006.03.20 21:34:26
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