ネコナデ
story 7
リストラ勧告を終えた鬼塚は、トラの姿を見ないといられない体になっている。
パソコン画面に釘付けにになっている姿を、部下の響子に悟られまいと必死に隠す。
会議室では開発部による新製品のプレゼンが行われ、鬼塚は珍しく食い入るように説明を聞いている。
上位機種の新製品「マルみえminiターボ」はモバイル対応が可能となる。
これでいつでも、トラを携帯で見られることに喜ぶ鬼塚。
早速、開発部の木下に頼み試作品を借りた。
トラの部屋についた鬼塚は、窓のサンの所に覚えの無い、猫用ノミ取りブラシを見つけた。
手に取ると、トラが鬼塚に体を擦り付け始める。
そのブラシでトラの体を撫でてみると、気持ち良さそうに体をくねらす。
「誰なんだ、これを持ち込んでトラの世話をしていたのは?」
story 8
週末に家族を連れて釣りに来た鬼塚。
そこでもなお、携帯でトラを見ていると子供たちに気付かれてしまう。
「お父さんもゲームやってる」
家で猫育成ゲームをしている子供たちは、携帯をいじっている鬼塚がゲームをしていると勘違いをしたのだ。
見せて見せてとせがまれ、ちょっと自慢げな気分になる鬼塚。
1匹だけだとストレスメータが上がってしまうので、2匹いるとうまく行くよ、と子供に教えられた。
鬼塚はトラを抱え動物病院を訪れた。
隣に座る小太りの女性が、犬を抱えて座っている。
にっこり笑って、トラにこんにちはと挨拶し、自分の犬とのコミュニケーションを取らせようとする。
その後に鬼塚にぶしつけに笑いかけてくる。
動物を触媒にして人との距離を縮めようとするペットの飼い主に、嫌気がさす鬼塚。
ペット依存をしている人間が嫌いだった。
「それは...私自身じゃないか...」ふと我に返る。