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カテゴリ:お国柄(国際)
先日、ノーベル平和賞をバングラデシュのエコノミスト、ムハマド・ユヌス氏と彼の創立したグラミン銀行が受賞しました。
実はこの方はNGOや開発関係者の方面では、長いことノーベル平和賞有力候補といわれ続けてきたので、「そうかー、とうとう取ったか~」と、思いました。 彼の自伝が日本語でも出版されています。以下、紹介文を抜粋してみました。 「地球上で最も貧しい国、バングラデシュ。たび重なる洪水やサイクロン、大飢饉によって国土は荒廃し、多くの人々が何世帯にもわたって極貧の生活を続けてきた。 だがここに、「貧者の銀行」を作り、貧困の撲滅にめざましい成功を収めている人物がいる。グラミン銀行の創立者、ムハマド・ユヌスである。 貧しい人々に無担保でわずかな金を融資し、それを元手として小さなビジネスを開始させ、経済的に自立させる。----ユヌスが編み出したこの手法は「マイクロ・クレジット」と呼ばれ、今やアメリカやフランスをはじめ世界約60カ国で実践され、大きな成果を挙げている。 ユヌスは語る。「貧困は、私たちが生きている間に地上からなくすことができる。」と。 「ムハマド・ユヌス自伝 貧困なき世界をめざす銀行家」(早川書房 1998年) この本を初めて読んだときは、いたく感動して、「マイクロ・クレジットばんざい!」みたいな気持ちになったものでした(単純…)。今ではいろんな国で、国連やNGOをはじめいろいろな団体が行っているマイクロクレジットですが、いろいろな失敗や批判や反省も生まれてきています。 実は去年のスリランカでのお仕事の一部は、北部で行われているマイクロ・クレジットの実態調査も含まれていました。 うまくいっている、というところもあれば、あまりうまくいかないので、止めてしまった。というところもありました。 うまくいっているところ(多分、ユヌスさんが本で書いていたような試みも含め)と、そうでもないところを比べてみるに、いくつか目立つ相違があります。 まずは、銀行の機能自体。グラミンでは大卒の優秀な人材を農村に支店長として派遣し、そこで腰を落ち着けて、村人との接触し、村人のモチベーションを上げ、フォローアップを行い…と、きめ細かい機能を確立させています。 別にエリートを投入しているからうまくいっているのだということはありませんが、外(ドナー)からお金が入ったので、プログラムの一環として数年単位でマイクロ・クレジットをやってみよう。。というのとは全然違います。仕込みの段階からシステムがちゃんとしていないと、そして時間をかけないと、せっかく投入したお金もどこに行ったのか、なくなちゃった。という話もよく聞きました。 お金がなくなっちゃった。。というケースは、圧倒的に融資先が男性だった場合が多いです。男性はそいう「あぶくゼニ」があると飲んだり、打ったり、吸ったりしてしまうそうです。(なんなの。。男性って…) なのでグラミンが最初から女性をターゲットに絞って、男性からの邪魔が入っても、根気良く説得し、良い例を示し続けて、女性に貸し続けたのも、うなづけます。 グラミンはこれだけ有名になってきたから、今はどうなのか(男性も対象としているのか)分かりませんが。 そしてなんと言っても、うまくいくいかないは、村人のモチベーションにかかっています。 このノーベル賞のニュースでBBCを見ていたら、支店長が青空集会所みたいなところに来るのを、女性たちが起立、敬礼して向かえているのを見て、「うわ~なんか軍隊みたいだなあ。」と思ったのですが、実際気合の入り方は軍隊並かもしれません。 グラミンはとても厳しい連座制を取っています。5人のグループを作って、その中の一人でも借り倒れすると、他の4人が責任を取ります。 スリランカで調査したあるNGOは「連座制のために村人同士の関係性が悪くなるので、お金を借りたがらない人もいる。」というような話をしていました。 こういう場合は、まず支店長なりNGOなりが、村人の関係性や労働力と融資額のバランスなどを見極めることが大切です。が、そもそも村人が「関係が悪くなるくらいならお金を借りないでもいいや。」と思っているなら、そこまで困っていないとも取れます。 軍隊式の敬礼をしていた女性たちには、貧困から抜け出したい、という熱い思いと、もしかしたら明日はもっと明後日はもっともっと生活がよくなるかもしれない、という希望を抱いているようにも見えました。 貧困を、「私たちが生きている間に地上からなくすことができる」かどうかは彼女たちにかかっているのかもしれません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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