The Bill Douglas Trilogy (1972)
My Childhood
My Ain Folk
My Way Home
Rotton Tomato : http://www.rottentomatoes.com/m/1200205/
スコットランド出身の監督、ビル ダグラスの自伝的3部作。
制作費もままならない監督だったが、BBCのプロデューサーに見入出され、第一部My ChildhoodはBBC Ch4で放送された。その後も周囲のバックアップを得て、長い年月をかけて3部作として完成した作品。少年期から青年期までの主人公は、同じ一人の少年が成長するままに演じている。
スコットランドの貧しい炭鉱町。My Childhoodでは、まだ幼い少年期の貧しい、それでも祖母と兄がいた頃の生活が描かれている。何も知らない子供時代。彼の世界は閉ざされていたからこそ、さびしくとも、安全で、安心のある世界だったといえる。
続くMy Ain Folk(私の家族)では、幼い頃「家族」だと思っていた2人と引き離された後の彼の10代前半が描かれている。貧しいとか、家族が崩壊しているとか、そんな言葉では語りつくせない。非常に淡々としていて、大きな盛り上がりがあるわけでもなく、ただ「語っている」ように目に、耳に入ってくるのに、それが迫ってくる。
そして最終作 My Way Home。どうしても求めてやまなかった「家族」を失い、それでも生きていく青年の世界が、初めて、ゆっくりと「外」へと開かれていく。そして、最後に彼がたどり着く、であろう未来。
50代の若さで、たった4作を世に遺して、この世を去った彼だが、彼がこの作品を完成させてくれて、本当に良かった。
映画にしても、本にしても、絵画にしても、作品の中には、「どうしても作らざるを得なくて」作者の身体から溢れるようにこの世に出てくるものがあると思う。彼はこの物語を「作ろうと思って」「人に見せようと思って」作ったように思えない。
見ていて楽しい映画では決してないし、どちらかというと、悲しく、痛く、つらい物語であるといえる。
でも力強い。たとえ求めるものが与えられなくても、人は生きていける。この人がこの人生を生き延びてくれて、本当によかった。