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テーマ:今日の出来事(291762)
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「キイーッ」
甲高く一声鳴くと、ごろんと横たわった。いつも見せるリラックスしたポーズは、目こそしっかりと見開いているものの、もう息をしていなかった。一緒に見守っていた妻と長女の鼻をすする音だけが部屋に響く。 あと3ヶ月で9歳を迎えるはずだったラビ。うさぎの平均寿命は7年というから、天寿を全うしたと思いたいが、もっともっと生きて欲しかった。 ミニうさぎのチェリーが3歳で死んだとき、しばらくはペットショップに入ることもしなかった。そんなある日、ふと入ったペットショップで目が合ったのが、生後2週間のミニウサギだった。 チェリーと同じグレーの毛並みだが、チェリーが顔の中心が白かったのに対し、顔から手足の先まで、全てグレー1色。家に連れて帰ると、子供たちの最初の一言は「ねずみみたい!」だった。 来た当時はえさ箱の中にすっぽりおさまり、いかにもミニうさぎらしかったのだが、どんどん大きくなり、しまいには4kgを超える立派なおばさんうさぎになっていた。 庭で放していたときに、入ってきた近所の犬に頭を押さえつけられて、一週間ほどえさも食べずに放心状態だったこともあった。 マンションに引っ越してからはずっとケージの中だったが、りんごやバナナの匂いがすると立ち上がっておねだりをした。 抱かれるのが嫌いで、抱こうとすると全力で抵抗するため、つめきりはいつも大変だった。そのくせ、寂しがり屋で、網から鼻をつきだしては、頭を撫でてもらいたがった。撫でてやると、気持ちよさそうに目を半開きにしていた… そんなこんなが頭の中でぐるぐると回り出し、涙が自然と溢れてきた。 そういえば、網から鼻を突き出す時間が、ここ数日、とても長かった。いつもなら、5分くらい撫でてやると満足したように離れていたのに、10分、20分撫でても、撫で終わってケージから離れても、まだずっと鼻を突き出していた。もうすぐ、別れが来ることがわかっていたのだろうか。 ラビのちょっとした仕草に家族が笑い、今日のラビはこんなだったと、話題にのぼる。ラビは間違いなく、我が家の三女であり、家族の心を和ませてくれた。 ラビの最後の鳴き声は、「さようなら」だったのだろうか。私はこう返したい。 「ありがとうね、ラビ。本当に、本当にありがとう。」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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