最新作【シッコ(原題:Sicko)】で話題の
マイケル・ムーア監督が
1997年に製作したドキュメンタリー映画です。 今から丁度10年前、米経済は好況に沸き企業利益は過去最高、株式市場も大盛況でした。
当時から既に世界はグローバル化の一途を辿り、先鞭をつける米企業は労働力の安い海外へ生産拠点を移していたので国内で多くの労働者がリストラされ生活苦に喘ぐ憂き目にあっていました。
リストラされた労働者たちは「米経済のどこが好況なんだ?一部の企業とそのトップが潤っているだけじゃないか」と思ったことでしょう。
これは今の日本にも当てはまることだと思います。
海外に生産拠点を移し海外で大きな利益を上げる一部の企業が日本の経済を好況に導いているだけで、一般庶民は給料は下がるかもしくは上がらない状況が続き、政府の「経済は好調に推移している」などという発表にこれまでずっと実感が持てませんでした。
ただ、トヨタが米に生産拠点を置いたのは昔起こったジャパンバッシングに学んだ結果で、米に雇用をもたらしたトヨタは売り上げがGMを越してもそのおかげでバッシングされずに済んでいます。
話がそれましたが、リストラされた労働者たちに会いインタビューを重ねた結果、彼らを雇用していたCEO(経営最高責任者)に直接説明を求めるべく
マイケル・ムーアは全米中を駆け巡ります。
一度や二度の【面会お断り】などにめげません。
所を変え、品を変えてアタックアタック
ナイキのCEOに突撃インタビューするなどかなりの強者ですね。
まぁ大統領でさえ平気で相手にできる人ですから、企業のCEOなどへっちゃらなのでしょう。
反面、彼の出版した本のサイン会で「たった今解雇されてきた」という女性に向ける目は神父のように優しく、大きな身体で彼女を抱きしめ慰めます。
こういったジャーナリストがまだ健在なのはアメリカだからでしょうか。
日本では口先で批判はしても行動に移す度胸のあるジャーナリストはいませんね
しかしマイケル・ムーアがこれほどの批判精神と行動・実行力をもって
ドキュメンタリーを製作・放映するに至っても状況は好転したとは言えません。
それでも彼は懲りることなくアメリカの病んだシステムを分析し批判し続けます。
最近作【シッコ】では医療システム・現場に取り組み、とうとう政府を敵に回したようです。
キューバに撮影に行ったことで米財務省が調査に入り、フィルムを押収する方向に動いているという噂が広がったみたいで、マイケル・ムーアは大事をとってフィルムのコピーを海外に保管したというお話まで出たようです。
そのあたりの詳細は下記のブログで詳しく書かれています。
Gigazine
マイケル・ムーア監督の一連の作品を観ると、いかに政府高官と企業トップによる私利私欲で政治・経済が牛耳られ庶民が振り回されているかということがよくわかります。
アメリカほどではないにしてもアメリカに追随し続けた日本は未だに金魚の糞のように追い続けている気がします。
ただ次回大統領選挙では民主党が有利だそうですし、日本に於いても昨今の参院選で民主党が勝利しましたから今後の変化に期待するとともに、しっかりと監視の目を向けていきたいと思います。
なお、Gyaoでマイケル・ムーア監督の2作品(華氏911・ボウリング・フォー・コロンバイン)を9月30日まで無料で鑑賞できます。
マイケル・ムーア監督作品(映画のみ)
1989 ロジャー&ミー(GM会長突撃インタビュー)
1994 ジョン・キャンディの大進撃(コメディ)
1997 ザ・ビッグ・ワン
2002 ボウリング・フォー・コロンバイン(コロンバイン高校銃乱射事件)
2004 華氏911
2007 シッコ