千の風になって
「戦争を恨むよりも、人を愛すること」高遠さんのインタビューをテレビの放映で聴いた。この人は本当の気持ちを偽り無く話しているというのが率直な感想だった。映像がなく、声だけだったので、余計にその声が真相を物語っているように思われた。高遠さんについても、世の中には疑いの目を持ち、いろいろな憶測をしている人もいるが、この日彼女が語った言葉には、やはりイラクで人道支援を行い、イラクの子どもたちと触れあっている人にしか言えない言葉の響きを感じる。高遠さんは、マザー・テレサを尊敬していたという。マザー・テレサは、宗教の違いにとらわれずインドの路上で亡くなっていく人々に手を差し伸べ、どの人の心の底にも、ともに苦しむキリストを発見しながら、無償の愛を与えたカトリックの修道女である。高遠さんは、こうしたマザー・テレサの信念のある生き方に大きな影響を受けていたらしい。イラクでストリートチルドレンの世話をし、サポート活動をする動機も、このマザーテレサの影響が大きいという。高遠さんは、イラクの子どもたちに伝えたい言葉として「絶対にあなたたちを見捨てません。必要なことは、戦争を恨むよりも人を愛することだと思う」と、その思いをきっぱりと語った。「見捨てない」という言葉に、私は、高遠さんのイラク行きの本心を感じていた。自衛隊撤退などの政治思想的な思惑ではなく、高遠さんにとっては、この子どもたちとの触れあい、そして、その子たちの「こころの母親」になることの方が大切だったに違いないと思うからだ。どんなに体が大きくても、米軍の空爆で最愛の親や家族を亡くした、かれらストリートチルドレンの心の傷は大きく、高遠さんにまるで小さな子どものように甘えている姿を写真映像で見たことがある。その子どもたちが高遠さんを慕う思いは、おそらく高遠さんには痛いほど伝わっているはずだ。戦争の被害は、まちや国、大地が壊されるだけでなく、兵士や民衆の心にも体にも大きなトラウマを残す。それは、二つの世界大戦、そしてベトナム戦争、湾岸戦争などでももはや証明済みである。多くの人々が、国家レベルの犯罪的な戦争で生命を奪われ、残されたものたちの悲しみが続く。それが、イラクの現実である。高遠さんは、言う。「彼らも愛する家族を殺され、彼らの悲痛な叫びを届かせるには、この方法(今回の事件)しかみつからなかったのだろうと感じた」と。そして、「必要なことは、戦争を恨むよりも人を愛することだ」という高遠さんの言葉に「千の風になって」という詩が重なってくる。これは、新井満さんが絵本などで紹介し、いま話題になっている。http://www.twin.ne.jp/~m_nacht「千の風になって」(日本語詩/新井満)は、作者不詳のまま伝えられ、9.11の犠牲者のためにまた、戦乱で犠牲になった人々のために静かなレクイエムになっているという。 (エコろじー編集人 稲田陽子)・・・・・・・・・・・日本語板(新井満)千の風になって私のお墓の前で泣かないでくださいそこに私はいません眠ってなんかいません千の風に千の風になってあの大きな空を吹きわたっています秋には光になって畑にふりそそぐ冬はダイヤのようにきらめく雪になる朝は鳥になってあなたを目ざめさせる夜は星になってあなたを見守る私のお墓の前で泣かないでくださいそこに私はいません死んでなんかいません千の風に千の風になってあの大きな空を吹きわたっています英語版 (Auther Unknown)I am a thousand windsDo not stand at my grave and weepI am not there. I am not sleep.I am a thousand winds that blowI am the diamond glints on snow.I am the sun light on ripened grain.I am the gentle autumn’s rain.When you awaken in the morninng’s hush,I am the swift uplifting rushOf quiet birds in circled fligt.I am the soft stars that shine at night.Do not stand at my grave and cry;I am not there,Idid not cry.