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カテゴリ:現代詩
バックヤードでぼくは
絵を描いていた 設計図を描くように 慎重に慎重に 描いていた フォワードでなにが起こっているのか ぼくにはぼくの想定でしかなかった 他人事というのだろうか お客様意識というのだろうか ただ応援するだけ意識というのだろうか ぼくの想定は 極めてぼくに都合よくできているんだ 極めて都合よくできているから ぼくには皆目見当がつかないんだ フォワードでなにが起こっているのか ぼくはバックヤードの個室にいた 個室には鍵がかけられている その安心に支えられ 絵を描いている うーん まだまだ完成には程遠いぞ うーん まだまだ と思って フォワードを見ると 誰かがバックヤードに向かってくる 向かってくるが ズボン下ろしながら 向かってくるが 鍵を見て あきらめたように また戻っていくぞ 戻っていくぞ 不安が去来する ふと 鍵を見れば 開いているではないか ぼくはズボンを下ろしたまま 開いているではないか 明るいフォワードから ぼくは丸見えだ ぼくは丸見えのまま ズボン下ろしたまま ま いいやと そのまま 丸見えを味わっていたんだ 絵は完成した そろそろ帰るか と 去来した とき なにかが変質した 帰るか? このまま? 帰るのか? なにかが変質した だれがフォワードを維持するんだ この便所おとこ! 自分だけよけりゃ いいのか! 便所おとこ! 自分だけ排泄できれりゃ いいのかよう! 急激な不安に駆られ フォワードへ出た 瞬間 場面は 暗転していた 照明はすべて落ち 天井もぶかぶか 今にも崩れそう 床はどろどろ がらんどう 洞窟状態 まっくらけ 車が 突っ込んでガソリン垂れ流し いまにも引火 爆発寸前 ただ ぼくの絵だけが 無傷だった 飾ってあった スタッフの女性にぼくは聞いた ちゃんと聞いた ぼくはちゃんと聞いて ちゃんと伝えたい そういう思いで ちゃんと聞いた けれど彼女は バイクがずらずらやってきて もうどうしようかと思った もうどうしようか 思った そればかり 肝心なこといわない バイクじゃなく 車だろう 車がいつどうやって突っ込んできて フォワードが こんなになっちまったんだ 天井ぶかぶか 照明全壊 床どろどろ その辺ちゃんと教えてくれよう 頼む 教えてくれよう 教えてくれよう 教えてくれよう 教えてくれよう お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005/09/25 10:40:59 AM
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