カテゴリ:音楽ネタ
Miles Davis 『On The Corner』 (’72)
マイルス・デイヴィスのレコードジャケットは全部カッコいいんですが、何か特にイカレてるな~って思うのがコレです。内容も。 1曲目の始まり方がもうブっとんでて、曲の途中からイキナリ凄い勢いでバッツーンって始まります。フェイドインとかじゃなく、ブった切った状態で唐突に飛び込んできます。DJの人とかがカットインとかしますけど、そんなモンよりもブツッ!と突然入ってくるんです。初めて聞いた時そこにまず「う~わッ!何だコリャッ!」ってなりました。 「始まりも終わりもない音楽」を作りたかったから、そんな始まり方にしたらしいですけど、「寝起きでハイテンション!」みたいなオープニングから、ず~っと怒涛のインプロヴィゼーションが続くんです。それもかなりピリピリした感じの。マイルス・デイヴィスが例の猛禽類のよーな鋭い眼でバンドに睨みを利かせ、即興がダレないよーに統率してるのが伝わってきます。 ミュージシャンとして成功したマイルスには、「若い黒人が俺様の音楽を聞かない」っていうジレンマがあったそーで、それゆえにこのアルバムはメタクソなまでにファンキーな仕上がりの上、ジャケットをコーキー・マッコイという漫画家によるポップなイラストにし(次作『Big Fun』のジャケットイラストも)、ジャズを好んで聞く人たち以外にもアピールするも、発表すると同時に理解不能の「ゴミ音楽」として酷評されてしまったそうです。 30年近くたって、HIPHOPやテクノとかハウスとかの“クラブ・ミュージック”の世代による、古い音楽の発掘、再発見の活動から、このアルバムはよーやく「傑作」の扱いを受けますが、マイルスが、発表当時、「評論家のヤローどもは、音を聴く前にクレジットを見て勝手に内容を判断しやがるから、俺様以外のミュージシャンの名前はジャケットに記載するな!」と挑発的な事を言い、実際その通りにしちゃった為、参加ミュージシャンも長年不明だったそーです。 前に何かで読んだんですが、このアルバムに参加したミュージシャンが、HIPHOP世代の息子に「父ちゃん、スゲエじゃん!『On The Corner』で演奏してたなんてヨオ!」って言われて、「レコーディングに参加したけど、当時はそのスゴさなんて理解できなかったのに・・・。」って思ったそーです。
時代の変化によって、アートの評価がガラリと変わってしまったり、このアルバムのよーに、「時代がやっと追いついた!」といった感じの言葉とともに語り継がれる作品も多いですが、ここ最近の音楽で、何十年か後に「時代が追いついた」って言われそーなのってまずないですよね?
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